出版社内容情報
2015年刊行『科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-』の改訂版。
科学研究は、多くの先人たちの積み重ねによって発展してきたものであり、その成果が私たちの社会生活に及ぼす影響は極めて大きい。それは科学者にとって誇りであると同時に、大きな責任と期待を担っていることを意味するが、近年、科学の持つ根源的な価値観である「真理の探究」を疎かにする事例(捏造、改ざん、盗用等)が発生している。仮にこうした状況が続けば、科学への信頼は傷つき、科学の健全な発展が脅かされることにつながるだろう。本書では、人文・社会科学から自然科学までの全分野の科学者が、「どのようにして科学研究を進め、科学者コミュニティや社会に対して成果を発信していくのか」を命題に、研究を進めるにあたって知っておかなければならないルールや、倫理綱領、行動規範、成果の発表方法、研究費の適切な使用等、科学者にとって必要な心得について、エッセンスを整理しまとめる。
【目次】
Section I 責任ある研究活動とは
1.科学と科学者
2.世界の幸せに貢献する科学(Science for global well-being)
3.今なぜ,責任ある研究活動なのか?
4.社会における研究行為の責務
5.今,科学者に求められていること
Section II 研究計画を立てる
1.研究のはじまり
2.研究の価値と責任
3.研究の自由と守るべきもの
-人類の安全・健康・福利(well-being)および環境の保持-
4.利益相反への適正な対応
5.安全保障への配慮
6.法令およびルールの遵守
Section III 研究を進める
1.はじめに
2.インフォームド・コンセント
3.個人情報の保護
4.データの収集・管理・処理
5.研究不正行為とは何か
6.好ましくない研究行為の回避
7.秘密保持
8.中心となる科学者の責任
Section IV 研究成果を発表する
1.研究成果の発表
2.オーサーシップ
3.オーサーシップの偽り
4.不適切な発表方法
5.著作権
Section V 共同研究をどう進めるか
1.共同研究の増加と背景
2.国際共同研究での課題
3.共同研究で配慮すべきこと
4.大学院生と共同研究
Section VI 研究費を適切に使用する
1.はじめに
2.科学者の責務について
3.公的研究費における不正使用の事例について
4.公的研究費の不正使用に対する措置等について
5.まとめ
Section VII 科学研究の質の向上に寄与するために
1.ピア・レビュー
2.後進の指導
3.研究不正防止に関する取組み
4.研究公正・倫理教育の重要性
5.研究不正行為の防止と告発
Section VIII 社会の中で,社会のために
1.科学者の役割
2.科学者と社会の対話
3.科学者とプロフェッショナリズム