内容説明
耳鳴りによる耐えがたい苦痛から安楽死を望み永眠した女性のケースは、安楽死が法律で認められているオランダで、その根底にある問題を象徴する出来事であった―患者の死ぬ権利、医師の側における死の介助を拒否する権利など、さまざまな見地から検討されてきたオランダの安楽死法制定に至る背景を検証することによって、生命終結のありかたをめぐって揺れるわが国の終末期医療のあるべき姿を考える。
目次
第1章 オランダ安楽死の現状―二つの委員会報告
第2章 オランダ安楽死法の原理
第3章 安楽死審査委員会
第4章 家庭医制度―信頼性と安楽死クリニック
第5章 オランダにおける現在の課題
第6章 耳鳴りのケースの裁定
第7章 「華ちゃんのケース」との比較
エピローグ―「人生の終焉」法
著者等紹介
盛永審一郎[モリナガシンイチロウ]
富山大学名誉教授。1948年生まれ、東北大学大学院文学研究科博士課程中退。研究テーマは実存倫理学、応用倫理学
ベイツ裕子[ベイツヒロコ]
山口大学医療技術短期大学部卒業。1991年よりオランダ在住。2010年より、アムステルランド病院ジャパンデスクに勤務。2011年個人会社を立ち上げ、(医療)通訳、翻訳に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たろーたん
4
最後の資料に安楽死の申請者は9000人前後だけど、実際に死ねるのは4000人前後だったので、半分ぐらいは断られていることに驚いた(注意深さの要件をすべて満たしていないと訴追されるリスクがあるため)。オランダでは「安楽死」の「患者の権利」ではなく、患者の意思と医師のケア・思いやりによる「治療における行為の一つ」のような位置づけに思えた。故に「生き疲れ」など基礎疾患に因ってではない安楽死の要望は医師として断られるし、断らなくてはならない。ただ、幼少期の性暴力のトラウマからの安楽死はあったらしい(続)。2022/11/24
ゼロ投資大学
2
2002年にオランダとベルギーは安楽死法を施行した。さまざまな見地から安楽死について向き合ってきたオランダの例より、患者の死ぬ権利や医師の側における死の介助を拒否する権利などについて考察されている。安楽死を望む人の切実な声や生命倫理など考えなければならない論点がたくさんあると感じた。2021/12/20
こ~じぃ。。
0
安楽死から終末期医療を考える・・・2017/01/02
だんごむしマヤ
0
20240815)公共図書館の電子書籍にて読了。少し前の文献なので、やや情報が古いような印象だったが、この問題にありがちな感傷的な要素を極力省いた硬い内容だったので、私には少し難しかった。カトリック信徒ながら、自分の終末のあり方は、自分で決めたいとやはり思った。少なくとも他者から倫理的に強制されたくはないと思った。2024/08/15