内容説明
熱力学を理解するうえで、エントロピーほど悩ましい概念はないだろう。実体がとらえづらいがために、「無秩序」「広がり」「無知」などといったさまざまな定性的な解釈が与えられている。本書では、シャノンが提唱した情報測度の特殊な例としてエントロピーを解釈するという立場から、歴史的経緯やさまざまな事例を挙げながら、エントロピーの正体に迫る。
目次
第1章 はじめに:熱機関から、無秩序、情報の広がり、自由、…、まで(第二法則の巨視的定式化;エントロピーの巨視的定義 ほか)
第2章 エントロピーはしばらく忘れて、情報ゲームで遊んでみよう(20の質問(20‐Q)ゲームでウォーミングアップ
一様に分布した20の質問ゲームに対するシャノンの情報測度の定義 ほか)
第3章 古典理想気体のエントロピーをシャノンの情報測度から導く(理想気体における位置のSMI;粒子が区別できないことによる相互情報 ほか)
第4章 いくつかの例とその解釈(理想気体の膨張;2つの理想気体の混合を含む過程 ほか)
第5章 熱力学第二法則について(何が自発過程を引き起こすか?;何がエントロピーを増加させるか? ほか)
付録A
著者等紹介
小野嘉之[オノヨシユキ]
東邦大学名誉教授。理学博士。主な研究分野は物性理論、電子輸送理論(アンダーソン局在、量子ホール効果、ポリマー中のソリトンのダイナミクス等)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アドソ
16
本書が書かれた動機が少々人間臭いのだけれど、内容はまじめで信頼できる。著者によれば、これまでエントロピーの定性的な理解に使われてきた乱雑さ、多様さ、無秩序さ、広がりなどの例えはすべて的をはずしているそうで、シャノンの情報測度の特殊なケースとして熱力学エントロピーが定義されるのだという。本書の内容を完全に理解できたわけではないけれど、もし本当ならこれまでほとんどの理系学生はとんでもなく的外れなエントロピーを教えられてきたことになり、難解な概念の代名詞のように扱われてきたことの雪辱が必要だ。2017/09/24
の
3
熱力学的エントロピーを情報理論の立場から議論し直し、エントロピーに関する認識の混乱を解消しようとする本。情報理論構築の過程で見出した情報速度という幅広い概念の特殊な例としてエントロピーを捉える。よく知られた最も単純な「20の質問」ゲームに慣れたのち、一般化して対象物を選び出すために必要な質問の最小回数の計算、確率分布、最終的に原子や分子まで理論が抽象化され、やっかいで深遠な科学の未解決ミステリーであったものが、離散と集中の繰り返しによる物質の変化だと理解できた。秩序から無秩序への変化とは。2016/03/04
ヤッジマン
1
著者が考えるエントロピーのあり方と、他の、今までよく使われていた解釈の不適切さに関する主張が少ししつこい。しかしながら、シャノンの情報測度を用いたエントロピーの解釈は、個人的にはエントロピーのイメージを沸かせてくれて、面白いものであった。おすすめできる、取っつき安い参考書だと思う。2016/06/26
はるゆう
1
流し読み。エントロピーは状態数の対数、と考えれば、特に不思議なこともないんだが。少しエントロピーがわかった気になった。2016/05/16
S
0
エントロピーについての解釈。同じ著者の「エントロピーがわかる」(講談社ブルーバックス)と合わせて読んだ。エントロピーにまつわる、情報とか乱雑さとかの概念の間違いを整理。これまで、曖昧な概念を曖昧なまま使っていたのが原因なところを攻撃している感もあるので、まぁそうだよねという感じはする。この問題にまつわる歴史や、混合エントロピーの議論は参考になった。2024/08/11
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