内容説明
この分野で日本をリードしてきた筆者が、多能性幹細胞の特徴から、倫理問題の本質、世界の状況、そして治療や創薬への応用に至るまで、いま私たちが知っておきたい話題の数々をわかりやすく解説。人類に恩恵をもたらす再生医療の基礎研究で得られた知見を実際の治療につなげるには、どのような技術やプロセスが必要なのか?―世の中に広まっている誤解を正し、正確な知識を提供する待望された入門書。
目次
1 多能性幹細胞の研究の歴史
2 ヒトの発生過程
3 幹細胞とはどのような細胞か―組織幹細胞の例
4 多能性幹細胞とはどのような細胞か
5 ES細胞やiPS細胞に関わる生命倫理と社会的対応
6 多能性幹細胞の可能性とリスク
7 再生医療への応用と世界の状況
8 新薬開発への応用
9 再生医療のための技術開発―大規模な細胞培養生産技術
10 再生医療のための技術開発―化合物による安定で低コストの分化誘導技術
11 まとめ
著者等紹介
中辻憲夫[ナカツジノリオ]
1950年生まれ。京都大学名誉教授。理学博士。京都大学大学院博士課程修了、ウメオ大学、マサチューセッツ工科大学、ジョージワシントン大学、ロンドン大学に留学ののち、明治乳業ヘルスサイエンス研究所研究室長、国立遺伝学研究所教授、京都大学再生医科学研究所教授、同所長を経て、物質‐細胞統合システム拠点設立拠点長。日本で最初にヒトES細胞株を樹立分配した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
グレートウォール
9
多能性幹細胞について山中教授によって有名になったiPS細胞と、ES細胞についての解説となる本。 社会的な生命倫理について、今後の可能性と再生医療への応用、新薬の開発への応用なども書かれており、幹細胞の基礎となる知識を養うことができる。少し前の本のため、幹細胞治療の最新の動向については情報の更新が必要だが、それでも十分に参考となった。 iPS細胞って耳にはするけど、何?という人におすすめ。 多能性幹細胞による治療はまだまだ時間はかかるけど、とても壮大で夢のある治療法だった。2021/03/08
無識者
6
細胞の発生について高校でやったことを思いだした。どんな応用にもそれがまずベースになっているのだと読みながら感じた。本書の目的は(そんなに難しくない)細胞医療の基本が理解されないまま報道されたり、政策が決められてしまったりしている現状においての啓蒙だろう。幹細胞の一番基礎的なものがes細胞で、基本的にはこれで実験が行われてきており、このes細胞での技術がipsをはじめとした他の幹細胞にも利用されているのだそうだ。ipsが優れているのは細胞の初期化で創薬研究等に力を発揮できるそうだ。2019/09/23
takao
2
ふむ2025/02/19
まえぞう
2
サイエンスパレットのシリーズは、オックスフォード大学出版局のA Very Short Introductionシリーズからの邦訳のはずですが、何冊か例外があって、本書も中辻先生の書き下ろしのようです。内容は多能性幹細胞についての概説になっていて、ともすればポジティブにもネガティブにもセンセーショナルに取り上げられがちな話題がわかりやすく記述されています。2015/07/23
モトさん
1
いかに、多能性幹細胞についていい加減な理解をしていたか。本書の二章まで読んだ時点で恥ずかしくなってきた。また、これらの細胞の実用化に向けた課題、取り組みなど、最先端の事例が優しい文面で紹介されていた。読んで良かった2015/11/16