出版社内容情報
医療に関する様々な専門職業倫理、法規制、医療経済・政策論を解説。高齢化や社会福祉に関する情報だけでなく、遺伝子工学、ナノテクノロジーなどの先端技術に関する情報を収載。
生命倫理学は1960年代にアメリカで誕生しましたが、それ以来、実践的学問として医学・医療の分野をはじめ、その他の専門分野や、さらには一般社会にいたるまで、多大な影響を与えてきました。本シリーズはそうした歴史的経緯を踏まえ、「医療現場ひいては社会一般に影響を与えると同時に、医療現場などで実際に役に立つ」ということを基本コンセプトにしています。
本シリーズの企画の背景には、アメリカのEncyclopedia of Bioethics, 3rd Editionの全訳である『生命倫理百科事典』(2007年、丸善、全5巻、計3500頁)があります。この翻訳は、日本の生命倫理学にとって大きな意義をもっただけでなく、医学・医療の分野はもとより、その他の専門分野や一般社会の要請に応えることができたため、高い評価を受けることができました。本シリーズはこの『生命倫理百科事典』の延長線上の企画として位置づけられます。
本シリーズは、幅広く生命倫理学及び関連分野の研究者や実務家を結集した一大プロジェクトです。40名の編集委員と総勢約240名の執筆者からなり、編集委員には生命倫理学の分野及びその関連分野で活躍している有能な研究者が就任しています。執筆者は、新進気鋭の若手からベテランまで網羅されています。本シリーズはこのような編集委員や執筆者の努力により、東北大震災などの影響によって当初の予定を遅れたものの、きわめて短期間のうちに刊行に漕ぎ着けることができました。もちろん、編集の過程では多少の軋轢も生じましたが、それらも、より良いものを作る上ではむしろ有益なものとなりました。
本シリーズの読者対象は、?@医療関係者(医師、看護師、薬剤師、コメディカルなど)、?A介護・福祉関係者、?B生命倫理に関心のある人文・社会科学系研究者、法律実務家、学生などです。これらの方々に幅広く読んでいただき、活用していただくことが期待されます。本シリーズは、専門外の人にもわかるように、極力平易に執筆されています。基本事項や概念をわかりやすく説明した上で高度な事項が述べられています。もちろん、本シリーズは現場で役立つことをめざしていますので、具体的な事例なども可能な限り盛り込まれています。
編集委員 ■大林雅之 ■徳永哲也
1章
内容説明
本巻で扱う、高齢者、難病患者、障害者といったテーマは、生命科学や医学の発展した社会における、生命の意味、死の迎え方、人権の擁護などが核心部分として問われる分野である。高齢者、難病患者、障害者に対しては、「治す」医療ばかりでなく、限られた健康状態でも心健やかに暮らすための福祉的支援と連携する医療が求められている。そのため、「医療福祉」という統合的な問題意識で、生命倫理的な議論も深めていく必要がある。本巻では、このテーマに関して、現場の視点に立った問題提起と改革への示唆を含む議論を紹介する。
目次
高齢者・難病患者・障害者医療への生命倫理学的視点と福祉政策の変遷
高齢者福祉
高齢者医療制度の現在
認知症ケアの倫理
高齢者の終末期介護と生命倫理
高齢者の自律とこれからの医療対応
難病患者の医療・ケア―看護職の視点から
難病患者の医療と介護―ALS当事者と家族の視点から
障害者福祉と生命倫理
障害者福祉制度の現在と未来
障害者運動と生命倫理学―脳性麻痺当事者運動をめぐる「関係障害」に着目して
著者等紹介
大林雅之[オオバヤシマサユキ]
東洋英和女学院大学人間科学部教授。1950年生。上智大学大学院理工学研究科生物科学専攻(生命科学基礎論部門)博士課程単位取得退学
徳永哲也[トクナガテツヤ]
長野大学環境ツーリズム学部教授。1959年生。大阪大学大学院文学研究科哲学・哲学史専攻博士課程単位取得退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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