内容説明
「味覚」と「嗜好」は食行動を考えるための『基本』であるが内容は大きく異なる。「味覚」は口腔内での信号の受容と脳への伝達という単純な生理学的現象であるが、一方「嗜好」は食物に対する好悪の判断や長期的な学習・記憶による総合的な判断基準を指す。「おいしさ」は個人の嗜好から生まれる。嗜好の個人差には著しいものがあるが、その要因を整理してみると科学的に捉えることも可能となってくる。本書では「食を考える地平を確立する」ことを目的に、味覚と嗜好から、おいしさに至る感性の世界を生理学・行動学・脳科学・食文化・食品科学などの幅広い視点から解説する。
目次
味覚と嗜好、そしておいしさ
味覚と嗅覚・食感
味覚伝達のメカニズム理論は激変時代
おいしさを探求する
油脂は味覚か
味覚の脳内伝達とやみつきの発生
食べ物のコクとは何か
おいしさの快感と品位
トウガラシの辛味と痛み―痛みまでがおいしさになる倒錯の世界か?
伝統の味、だしのおいしさを分析する
おいしいものは後味がよい
秋の高級食材、マツタケはなぜおいしい?
日本酒のおいしさの科学
酒のつまみの生理学―ビールのつまみはなぜエダマメやポテトなのか
ドイツのビールは多飲量性―たくさん飲めるビールはネズミのほうがよくわかる
魚を生で食べるおいしさ
新鮮とはどんな味?
嗜好の教育は幼児から
著者等紹介
伏木亨[フシキトオル]
1953年京都市生まれ。滋賀県に育つ。京都大学農学部卒業、同大学院を経て、1994年より京都大学農学研究科食品生物科学専攻教授。専門は食品・栄養化学。現在の研究テーマは、おいしさの科学、自律神経に影響を与える食品、疲労感の発生機構の解明と食品開発など。日本栄養・食糧学会理事、日本香辛料研究会会長。MSNジャーナルに「ニッポン食事情咄」を連載(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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