内容説明
性教育の目的について我々が共有すべき最低限の約束事、官能という言葉からとらえた性的快感、恋愛術やセックス技巧本の本質、結婚と性、去勢不安…。性に関する様々な興味ある問題について、プラトンの『饗宴』、フロイト、ラカンの精神分析思想、フェミニズム思想などを道しるべに、明解な回答を試みる野心的論考。
目次
プロローグ 性の倫理学の難しさ
第1章 性的とはどういうことか
第2章 『饗宴』
第3章 性教育は何のためか
第4章 官能
第5章 性愛教則本の世界―恋愛術と房術
第6章 結婚と性
第7章 去勢不安
著者等紹介
田村公江[タムラキミエ]
龍谷大学社会学部助教授(倫理学専攻)。1988年京都大学大学院博士課程単位取得満期退学
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感想・レビュー
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katoyann
22
2004年出版。倫理学の知見を活かしながら、セクシュアリティの規範を模索する論考である。プラトンは『饗宴』において、恋愛を「失われた合一」を求める行為とし、さらにフロイトはリビドーが自我から対象へ出払っている状態、とした(87頁〜88頁)。つまり、存在に欠如を感じているから恋をするのであり、またフロイトの規定に従えば、「人格」が吹っ飛んでいる状態が恋愛だという。そうした恋愛のイメージに触れながら、性愛に埋め込まれたジェンダーの権力関係に注意を促す。精神分析の解釈は難解だが、気軽にジェンダーを学べる。2022/08/28
さくさくぱんだ
1
日本では女性はセックスにおいては「いじめられる側」「受け側」として扱われることが多すぎることに疑問を感じ読んだ。筆者によると、セックスとは性関係の特別な代理物であり、肉感があることが性関係とそうでない関係の違いであるらしい。アカデミックな方面から性に関して理解するのに役立った。結局は、相手の体(特に男性が女性)を慈しみ、男性はセックスにおいても社会においても、ペニスの機能に頼りすぎない(=序列に拘っていることを自覚し、それにとらわれない)ことが重要なのである。つまり、女性には「それがすべてではない」のだ。2018/12/05