内容説明
太平洋を、あるいは南洋の海を、様々な荷を積んで航海していた数多くの船と、そこに働く人々にある日突然過酷な運命がめぐってきた。武器一つもたず戦場へと向かい、そして消えていった六万の船員たちへのレクイエム。
目次
第1章 「12月8日」の海
第2章 ガダルカナルの海
第3章 ダンピールの海
第4章 武器なき海
第5章 苦闘の海
第6章 「8月15日」の海
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roatsu
11
戦時輸送の実相を辛くも生き残った船員の方々の凄絶な体験を通して現代に伝える労作。決戦ばかり夢見て、輸送に代表される守勢的作戦を軽蔑し崩壊した日本陸海軍の愚かさは、現代日本でも経済の動脈を担う海員への国民全般の無理解・無関心に受け継がれている、という著者の主張はとても意義深い。光を浴びる花形ばかり追って、自らを縁の下で支える存在を無視する風潮は戦時平時を問わず破たんを招く、と6万人を超える膨大な船員達の犠牲が時を越え訴えているように思う。今は絶版のようだが一般戦記と並んで広く読まれてほしい。2015/05/24