出版社内容情報
『人間の証明』、『セーラー服と機関銃』…活字と映像を交錯させて、表現の力で社会を揺り動かした戦後最大の出版人、その魂の軌跡。
内容説明
戦後最大の出版人、その魂の軌跡。風雲児は詩人にして悪党。本と映画と音楽の融合、父との闘争と和解、価値破壊と文化創造…破格の構想力によって、「出版」は「事件」となった。幾多の受難から立ち上がった角川春樹、新たな闘争が始まる。
目次
序章 敗れざる者
第1章 少年時代(~二十二歳)
第2章 編集者時代(二十二~三十三歳)
第3章 映画プロデューサー時代(三十四歳~)
第4章 俳人と映画監督の間(四十歳~)
第5章 収監そして復帰へ(五十一~六十二歳)
第6章 最後の監督作品
終章 それでも敗れざる者
著者等紹介
伊藤彰彦[イトウアキヒコ]
1960年愛知県生まれ。映画史家。『映画の奈落―北陸代理戦争事件』『無冠の男―松方弘樹伝』などの著作で、映画人たちの修羅と栄光を描いて、ノンフィクションの新しい領域を切り開いた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keroppi
81
初の緊急事態宣言が発令された一昨年4月8日にこのインタビューが始まったという。少年時代から現在まで破天荒な人生を語り尽くす。「ある愛の詩」が角川春樹本人の訳だったとか、松田優作が土下座したとか、収監時の話だとか、驚くような話が次から次へと語られていく。映画「犬神家の一族」から最終作「みをつくし料理帖」までの話も実に面白い。日本映画を変えてしまったのは事実だ。時代の風雲児でもあったが、才能ある人を大切にする人でもある。今も紙の本と書店を大切に考えている。「最後の」というタイトルだが、まだ何か見せてくれるか。2022/03/15
ヒデミン@もも
38
「我が闘争」に次いで角川春樹の人生を読む。こちらの方が過去のことも格段に詳細。しかし、『最後の角川春樹』ってもう過去の人みたいなタイトル。昨年の講演会では、まだまだこれからとお見受けした。愛されるカリスマ。出自が全てだけど、こんな波瀾万丈の人生、ジェットコースターに乗ってるようで面白いだろうな。情が厚い人でもあるし、有言実行タイプのようなので、これからも注目したい。2025/01/17
ぐうぐう
38
立川談志の楽屋話は面白い。亡くなった芸人達との交流を抜群の記憶力をもって詳細に振り返るエピソードの数々は、談志の語りのうまさも手伝い、何より貫かれた一本の芯のそのブレなさが心地よく、貴重な証言というよりも、芸談としての面白さがあった。何年か前、BSで福田和也が角川春樹をゲストに招いて対談する番組を観て、角川春樹の語りのうまさ、面白さに舌を巻いたことがある。それは談志と同様に、貫かれた芯がもたらせるものだったという事実を、本書を読んで改めて痛感した。(つづく)2021/11/30
kei-zu
32
読みごたえがあるロングインタビュー。 角川映画に関する先行書は少なくないが、本書は春樹氏個人にスポットをあて、その誕生から書き起こされる。 本書にも指摘があるように、春樹氏製作の角川映画は「プライベートフィルム」としての性格が強いので、氏の経歴や視点は映画の紐解きにも役立つ。出版や映画に関する豊富な裏話もおもしろい。 その挙動にいろいろ言われることが多い一方で、公私ともに大変な状況の中、離れずにいた人が少なくないというのは、魅力がある方なのだろうと思います。2021/12/20
遊々亭おさる
23
小学生の頃、『セーラー服と機関銃』の小説と映画を読んで観て、すっかり薬師丸ひろ子のファンになった私は、角川春樹が仕掛けた「読んでから観るか、観てから読むか」のメディア・ミックス商法に見事に引っ掛かり、カモになった人間です。評論家から酷評されるも、大衆からは支持された映画の数々を世に送り出した男の疾風怒濤の人生を駆け足で振り返るインタビュー本。敏腕経営者としての顔とスピリチュアルなものに傾倒する顔。常識を覆す革新性と町の本屋の灯を守ろうとする保守性、毀誉褒貶が激しき男は、生き方そのものがエンターテイメント。2022/05/12