出版社内容情報
あるべき未来へ! 「時代の神経」たる作家の感応力で厳しく、深く日本社会を考察する「サンデー毎日」連載、大反響時評の単行本化。
内容説明
コロナ時代に顕在化した政治的無責任、社会基盤の崩壊、人心の動揺…。「時代の神経」である作家の感応力が、深く見つめる。リアルでありながら、理想を手放さない稀有な思考。危機の時代の羅針盤。
目次
1(南極で過去最高気温 石炭火力依存への警告;コロナ、景気判断… 統治の著しい形骸化 ほか)
2(末法の世に生きる 公共の言葉の復権を;感染症が生む不確実性 生活経済の見つめ直しを ほか)
3(戦争体験を風化に任せる 私たちは烏合の衆なのか;未曽有の大失業時代 みんなで暮らしを回そう ほか)
4(米国の負のエネルギー 日本は社会的活力喪失か;民主主義が死んで繁栄が続く これでいいのか ほか)
5(何もかも三流の国で より良く生きる方法;世代交代できない社会に 活力も未来もない ほか)
著者等紹介
〓村薫[タカムラカオル]
1953年大阪市生まれ。作家。1993年『マークスの山』で直木賞、1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞、2016年『土の記』で野間文芸賞・大佛次郎賞・毎日芸術賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
114
高村さんの「サンデー毎日」連載の時評集で、2020年3月から2021年5月までのものです。コロナの話題が必然的に大きくなっています。またオリンピックの前でオリンピックについてもかなり書かれています。いつも言っていますが私は保守的な考えですが、高村さんの時評はいつも読んでいてその通りだと感じています。今の状況(今日の朝日新聞の裏金問題や統一教会)についてはどのように書かれるのでしょうかね。2023/12/09
さぜん
57
インパクトあるタイトルに惹かれ手に取る。故開高健氏の言葉だそう。サンデー毎日で2020/3~2021/5までの連載時評。ジャーナリストではなく作家である高村氏が生活圏内から社会を政治を見て評する。ブレイディみかこ氏のエッセイに通じるものを感じつつ言葉で論じる重要性を更に認識する。「言葉は論理であり、言葉の軽視は論理の軽視であり、論理の軽視は社会秩序の解体である」その視点で衰退した日本の国力を嘆き「非効率を非効率と思わないのは日本病」と斬る。政治家達の浅はかさを無責任さを耳にするたびこの国の将来を憂う。2022/08/25
竹園和明
38
昨年に続くクロニクル第2弾。この1年間の考察事案は自ずとコロナと五輪、それに絡んだ政治と国民という事になる。著者は政治家ではなく作家という立ち位置からそれらを批評しているわけで、問題点を鋭く的確に指摘している点を評価すべき。降って湧いたようなコロナ禍に対し、右往左往して策も打てず国民を不安のどん底に陥れている政府与党最大の問題点は、この先何十年かのビジョンの欠如だろう。それを裏付けるようなそれぞれの考察は見事なまでに全部正解だ。しかし氏と同じ視点を我々が持たなければ、子供達に同じ思いをさせる事になるのだ。2021/09/18
ぐうぐう
37
2020年春から翌年の春までに書かれた高村薫の時評を収録。『コロナ禍のクロニクル』とサブタイトルにあるように、コロナに触れない時評はほぼない。「国難に向き合うため求められるのは、前進する意志と事態の徹底した分析、そして国民への説明である」と2020年3月にすでに高村は指摘しているが、この言葉が今週の「サンデー毎日」に書かれていたとしても違和感がないのが、この国のコロナ対策が一年以上前からほとんど停滞していることを明らかにしている。(つづく)2021/08/10
kum
29
2020年3月から2021年5月にかけて書かれた時評。コロナへの対応だけでなく、コロナ禍で浮き彫りになった(あるいはコロナに紛れて忘れられそうになっている)あらゆる問題についてバッサリと伐る。「さまざまな分野で非効率と劣化が進み、諸外国から周回遅れとなった日本の〈いま〉」には、課題もげんなりすることも山積みだけれど、無関心と慢心、そして楽観が生んだ現状であることは間違いなくそうなのだろうと思った。まずは現実を直視しなくてはいけない。2021/08/24