出版社内容情報
日本および日本人を問い続けた稀有なる思想家は、なぜ自死を遂げたのか。
西部邁の劇的な生涯を戦後史の中に描き切った意欲作。
内容説明
日本および日本人を問い続けた稀有なる思想家は、なぜ壮絶な自裁死を遂げたのか。西部邁の劇的な生涯を戦後史の中に描き、ニヒリズムを超えようとする思想的格闘の軌跡に迫る。深い友諠を結んだ文芸評論家による、初の本格評伝!
目次
第1部 予告された死の真相
第2部 反時代的「保守」への道
第3部 「天皇」と「大衆」への距離
第4部 戦後日本への弔鐘
著者等紹介
〓澤秀次[タカザワシュウジ]
1952年北海道生まれ。文芸評論家。西部邁ゆかりの言論誌『発言者』『表現者』の編集委員を務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
46
【虚無主義を超えて――】西部邁の著作は一時集中的に読んだ。だから、「自裁」の報は強く記憶に残っている。なぜ、他者を巻き込む形の死を選んだのか、という疑問とともに――。全共闘に始まる生涯を戦後史の中に描き、西部の思想的格闘の軌跡に迫る書。本書で『成熟と喪失』(江藤淳)に上野先生の解説があるのを知る。<晩年の西部邁が立ち会わねばならなかったのは、「一億総保守化」のただなかでの保守思想の死という絶望的な事態だった。故に彼は、その「死亡診断書」を書かざるを得ないところに、自らを追い込んでいったのである>と、……⇒2024/09/20
trazom
44
西部邁さんに関して言えば、私は、一時「新しい歴史教科書をつくる会」に参加されたような思想性には賛同できないが、反米保守の主張や、高度大衆社会・反知性主義への徹底的な批判については、強い共感を覚える。この評伝は、幼少時の出来事(吃音、妹の大怪我)、学生運動とその後、米と英での体験比較、最愛の妻と娘のことなどを通じて、西部さんの思想を形成する背景を見事に焙り出している。生前、サンチョ・キホーテと名乗った西部さん。ドン・キホーテとサンチョ・パンサの一人二役の矛盾が、あの衝撃的な自裁に繋がっていったのだろうか。2020/03/08
姉勤
28
西部邁の著書は数冊読んでいたし、氏の出演した「西部邁ゼミナール」や立川談志との前番組も愛聴していたので、分かったつもりになっていた。本書にて、ただ表層を舐めていた程度とわかったし、それが分かるのも、それらに触れていたからだと思う。袂を分った同行者へのレクイエム。西部のバイオグラフィとエピソード、そして中核をなす思想の由来と、業たる「非行性」。失望しつつ希み、絶望しつつ諦めない境界人の、「大衆」という無思慮な群体と化した日本人への自死という最期のアッピールすらも失敗したと、偲び、そしてもう5年も過ぎたかと。2023/05/13
元よしだ
10
読了~~ おもしろかったです。 以下引用 日本の大衆社会論。政治学者 松下圭一「大衆国家の成立とその問題性」。この論文は、高度経済成長期以前に、資本主義経済の進展に伴い、世欲化された市民が大衆に姿を変え、新たに大衆国家の出現を促すという論旨。ただしそこには、大衆を市民の変態として定義する視座があっても、西部のように、それが伝統社会にもたらす害悪の根源をつきとめ、精緻に分析する徹底性に欠けていた。2022/01/13
owlsoul
6
2018年、多摩川で入水自殺した保守思想家・西部邁。朝まで生テレビで宮台真司と口論し途中退席したエピソードが有名だが、相手を挑発し知的マウンティングを繰り返す宮台の言葉と比べ、西部の言葉には常に深い虚無感と、あきらめにも似た怒りの響きがあったように記憶している。その極端な思想は、端からはアクチュアリティがないようにも見えるが、全体を俯瞰すると、それは彼の自死までを含め論理的一貫性を持っている。死の欲動(タナトス)に突き動かされ、虚無を振り切るように走り続けたその姿は、成否に関係なく、とにかく突き抜けている2022/12/18