出版社内容情報
中央と地方、貧困、格差社会、戦争の影…現代日本の危機を予見していた清張作品のリアリティとは? 松本清張案内の決定版。
内容説明
中央と地方、格差社会、転落する男と女―。時代を超えて清張ミステリは読み継がれる。「東京」「昭和」「旅」「映画と小説」など、さまざまな角度からその魅力に迫る極上の松本清張ガイド。
目次
第1章 東京へのまなざし(初期作品に見る敗れゆく者たち―「西郷札」「或る「小倉日記」伝」;風景の複合―『Dの複合』『渡された場面』 ほか)
第2章 昭和の光と影(東京地図から浮かび上がる犯罪―『歪んだ複写』;昭和三十年代の光と影―『点と線』『砂の器』「声」 ほか)
第3章 清張映画の世界(ミステリを超えた物語―『砂の器』;戦後の混乱がもたらした事件―『ゼロの焦点』 ほか)
第4章 清張作品への旅(松本清張の「地方性」映画『張込み』の面白さ ほか)
著者等紹介
川本三郎[カワモトサブロウ]
1944年東京生まれ。評論家。著書に『大正幻影』(サントリー学芸賞受賞)、『荷風と東京』(読売文学賞受賞)、『林芙美子の昭和』(毎日出版文化賞、桑原武夫学芸賞受賞)、『小説を、映画を、鉄道が走る』(交通図書賞受賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
65
興奮したのは山梨贔屓であったという考察。甲府の地味な人造湖、千代田湖が登場する短編まであるとは恐れ入った。煮しめたような古本屋の前で、年端もいかぬ私に、ここに清張が来たんだよと小鼻を膨らませていた父の姿を思い出す。2019/07/16
アヴォカド
12
時々無闇と松本清張が読みたくなるのはなぜなんだろうか。多作なので、中には結構トホホな物もあったり、小道具が古くなっているのはどうしようもないのだけれど、それらを差し引いても余りある、何か人の変わらない部分を差し貫いているのだろう。いろいろ読み返したくなり、もう家にはないかなあと思いながらも探したらあったあった。宮部みゆきが「名作中の名作。これを読まずしてミステリを語るまじ」とまで言う『一年半待て』も再読してみた。唸った。2021/01/02
Gen Kato
6
松本清張作品および映画化作品ガイド。結末をがっつり語ってしまっているので、原作を未読の場合は読まない方がいいかもしれない(そのぶん踏み込みが深くておもしろいのだけれど)。映画、未見のものはもちろん、以前観たものもまた観たくなるなあ。2020/01/07
青雲空
6
清張論は既に先行が多い。本書の特色は映画ともいえる。清張映画は新旧36本というから驚く。 各社にまたがっているが、全集が出れば買うなあ。 チェックするとみていない作品も多いから。2019/06/18
hitotak
6
主に昭和20年~30年代に書かれた清張作品と映画についての解説・エッセイ本。東京とは比較にならないほど文化的に遅れ、貧しい地方を舞台に書かれた作品が多い。ハッピーエンドなど皆無、謎解きが成されていても後味が悪い作品ばかり。戦後日本の影の部分が書かれた清張作品は当時大いに読まれ、次々と映画化されていったおかげで、今はなくなってしまった地方の風景も映像になって残り、歴史的資料としても貴重なものになっている。2019/06/09