内容説明
戦争責任、他者としてのアジア、日本の権力構造、国家と死刑、窮極の愛と性…。現代史のアポリアと格闘し続け、世界映画の前衛を疾走した大島渚という稀有な時代精神を、戦後思想・芸術との関係のなかで論じ、未来への尽きぬ可能性を明らかにする。躍動する圧倒的批評!
目次
一つの国、一つの時代に、一人の映画監督という決意
鳩を売る少年は「世界」を告発する―『愛と希望の街』
一九六〇年、危機の時代の映画―『青春残酷物語』
赤い破壊の衝動―『太陽の墓場』
政治を超えて政治へ―『日本の夜と霧』
戦争責任と子供たち―『飼育』
四郎は「異数の世界」へ降りていったか―『天草四郎時貞』
時代の表層に浮遊する記号をいかに捉えるか―『悦楽』
戦後とはどんな時代なのか―『白昼の通り魔』
大島渚の二本のPR映画―『私のベレット』『小さな冒険旅行』〔ほか〕
著者等紹介
小野沢稔彦[オノザワナルヒコ]
1947年1月生まれ。映画プロデューサー、監督、脚本、批評(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gen Kato
1
読み砕くのにかなりの力がいる評論。松竹ヌーベルヴァーグの旗手を論じるには、これくらいの言語が必要だよなあ。大島渚作品は世評はどうあれ、合うものと合わないものの落差が大きくて、自分としてはそこが魅力な監督であります。2016/07/29
Isamash
0
映画プロデューサー、監督、脚本、批評家の小野沢棯彦氏による2013年著作。執筆にあたって、可能な全てに映画・ドキュメンタリーをDVD等で観直し書いた労作。個々の映画の批評に関しては、例えば夏の妹で米軍占領史の欠如批判等、同意できぬところはあるが、大島渚だけがその時代を生きることを根源的に問うことをあざやかに描き出し、大島の映画は映画を超えて時代と切り結ぶ映画。その点で大島渚は日本映画唯一の存在との指摘は、多くを見ているわけでないが、同意できるところ。著者の情熱が、全体的にほとばしっていて、心を動かされる。2021/08/08