内容説明
カミュにとって、社会的地位の上昇は下層階級からの脱出を意味するだけでなく、懐かしい世界からの追放でもあった。彼は階級離脱を果たしながら、子供時代の環境であった労働者階級への郷愁に突き動かされていた。トッドが伝える彼の尊大さと心優しさもまた、上昇への野心と下層への郷愁に対応するものであろう。反抗。野心。栄光。孤独。―郷愁。カミュの生涯とその時代を、息づかいが伝える輝きと闇にまで深く分け入り、比類なきスケールで描ききった決定版。
目次
新たな闘い
ランベールたち
三つの川がある島
「恐怖政治」
苦い体験
「親愛なる同志」
「唯一の女」
三人の友
「ストレプト―四〇グラム」
セバスチャン=ボタン通り五番地、庭側〔ほか〕
著者等紹介
トッド,オリヴィエ[Todd,Olivier]
『アルベール・カミュ―ある一生』の著者オリヴィエ・トッドは、1929年生まれのジャーナリストで小説も書く。大学で英文学を学んだ後、作家を決意した。シャンソン歌手で作曲家のジャック・ブレルの伝記も書いている
有田英也[アリタヒデヤ]
1958年生まれ。東京大学文学部卒、同大学大学院博士課程(仏文)修了。成城大学文芸学部助教授。著書に『ふたつのナショナリズム―ユダヤ系フランス人の「近代」』(みすず書房)。共編著に『セリーヌを読む』(図書刊行会)。主な訳書にシャンピオン『わが懐かしき街』(図書出版社)、ドリュウ・ラ・ロシェル『日記 1939―1945』(メタローグ)、フランク『ドリュ・ラ・ロシェル』(水声社)、ヴォルタ『書簡に見るサティ』(中央公論社、共訳)
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