出版社内容情報
夷地を調査し、万延元年遣米使節団としてアメリカに渡った仙台藩士・玉虫左太夫の生涯を描く歴史長編。明治政府とは違う民主国家を夢見、奥羽列藩同盟成立に奔走しながら悲劇的な死を遂げた人物の生涯を描く。「サンデー毎日」連載「北天の孤星」を加筆して書籍化。
内容説明
変わらねば滅びる。欧米列強が開国を迫る中、万延遣米使節団として世界を旅した仙台藩士・玉虫左太夫。日本に(共和政)を実現すべく奥羽政権樹立に挑んだ男の波乱に満ちた生涯!
著者等紹介
佐々木譲[ササキジョウ]
1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、飛んだ」でオール讀物新人賞を受賞。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞長編部門を受賞。2002年『武楊伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞を受賞。16年には日本ミステリー文学大賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
153
佐々木 譲は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。著者の幕末~明治維新の最終章、歴史的に抹殺されているだけあって、玉虫 左太夫を全く知りませんでしたが、先日読んだ同時代の物語、今野敏の「海風」よりも志も高く、深みがありました。 滅びの美学かも知れませんが・・・ https://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-689.html2024/09/26
天の川
58
ずっと知りたかった玉虫左太夫!仙台藩の学究の徒は、幕末でなければ藩校で尊敬を集め、穏やかに生を終えたに違いない。しかし、頭脳明晰な彼を時代は放って置かなかった。蝦夷地視察で理不尽なアイヌ差別を問題視し、修好通商条約使節に随行しアメリカ社会の自由と平等に憧れ、欧米の黒人差別に気づき、共和国の理想を日本に根づかせたいと考えた彼。混迷を極めた幕末に、真摯に理想社会を考えた儒学者を奥羽越列藩同盟の戦犯として捨て石にしなければ、きっと明治政府の頭脳となったに違いないのに…と、つい思ってしまうのだ。2025/04/04
がらくたどん
49
玉虫左太夫は政治家でも軍人でもなく旺盛な学識と類まれな事務処理能力を持った下級事務官。藩校や儒学塾の教諭をしながら開国交渉時の速記事務官・北海道巡見奉行の随行記録係・遣米公使幕僚団の随行記録係と裏方街道一直線。しかも最期は幕末混乱時の不毛な連座切腹と浮かばれない。だが下士故の謂れのない侮蔑に悩む間も惜しいほどの新しい知識への好奇心と切磋琢磨できる学問仲間への友情、知見を記録として残す使命感に彩られた人生はなんと豊かな喜びに満ちていることか。存分に世界を見て聞いて考えて書いた。知を以て志を貫く志士であった。2025/05/13
雅
48
玉虫左太夫なる人物の生涯を描いた作品。知らない方でしたが、激動の人生を堪能させてもらいました。2024/11/15
kawa
40
幕末周辺の歴史小説好きには堪えられない一作。仙台藩の中級藩士の子・玉虫左太夫が主人公。文に優れた彼は林復斎や大槻磐渓ら学者の引きで江戸で期待の人材に成長、ペリー来航、蝦夷地調査、初の米国訪問、奥羽越列藩同盟など幕末史のエポックな事件や事象のキーパーソンの一人として関わることになる。主人公の描き方にやや出来過ぎ感があるものの、幕末の滅ぼされる側の詳細事情が知れ、多くの有為の士の無念も偲ばれる秀作に仕上がっている。読みどころは米国訪問の様子と奥羽越列藩同盟の挫折。2024/10/26