内容説明
39歳になったカメラマン・横道世之介が暮らすのは、東京郊外に建つ下宿「ドーミー吉祥寺の南」。元芸者の祖母が始めた下宿を切り盛りするあけみちゃん、最古参の元芸人の営業マン礼二さん、書店員の大福さん、大学生の谷尻くんらとゆるーっと暮らす毎日に、唐突に知り合いのベテラン教師ムーさんの引きこもりの息子一歩が入居することになって…。
著者等紹介
吉田修一[ヨシダシュウイチ]
長崎県生まれ。1997年に「最後の息子」で文學界新人賞を受賞し、デビュー。2002年『パレード』で山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で芥川賞、07年『悪人』で毎日出版文化賞と大佛次郎賞、10年『横道世之介』で柴田錬三郎賞、19年『国宝』で芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
392
吉田 修一は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。横道世之介シリーズ第三弾、歳時記の様な短編集、上巻は一気読み、続いて下巻へ。トータルの感想は下巻読了後に。 https://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-619.html2023/07/02
seacalf
318
やっぱり世之介はいいねえ。安定のゆるさ加減にたっぷり浸かって、ああ気持ちがいい。39歳のカメラマンになっても飄々とした空気感を纏った姿はまったく変わらず。後輩エバの彼女が評したように「スーパー銭湯の不感の湯」のような人でそばにいたらホッとするのだろうなあ。エキストラとして下宿人みんなで繰り出したり、引きこもり青年がおばあちゃんを助けたり、のほほんとお月見をしたり、そんなあれこれを読んでいると、肩の凝りがほどけていくような心地良さに包まれるのだ。今回もくくく、はははと笑って幸せな読書。下巻も楽しみ。2024/01/14
旅するランナー
295
横道世之介の3作目を出した人気小説家、吉田修一である。世之助39歳、2007年9月からの 1年間、各月の出来事を笑いと涙で描く。なんてことないエピソードがダラダラ続くだけなのだが、これが絶妙に面白くて、しみじみしている。さすがである。世之助に再び合わせてくれたことに感謝しつつ、下巻に進みたい。2023/08/04
修一朗
291
前作から5年ぶり。前回のレビューを読んでみた。そうそう世之介は出会った人すべてにイエスと言える人なのだった。5年後に世之介に再会したら彼の年代は24歳から15年進んで39歳になっていた。ドーミー南吉祥寺がいい。そこで出会う全ての人に善意でもって接し,そして出会ったことでその人の人生が少しいい方向変わっていくのだ。悪意を見ない人生,あこがれるねぇ。下巻へ2023/11/23
bura
278
「何も考えずに済むんです、横道さんと一緒にいると」横道世之介、三たび登場。39歳カメラマンの世之介が住んでいるのは吉祥寺。ほぼ夫婦であるあけみちゃんが経営している下宿で一緒に暮らしている。そこで知り合いの引きこもり高校生、一歩をあずかる所から物語は始まる。仲間たちとの楽しいやり取り、善良な世之介の日々。一番好きだという亡くなった恋人、二千花ちゃんも気になりつつ下巻へ進む。読んでいて気付くと緩くて開けっ広げな世之介のペースに巻き込まれている。この感じがいいなぁ。でもあの瞬間が少しずつ近づいてくるんだね…。2023/06/22