出版社内容情報
愚挙か果てぬ野望の現れか─。
わずか6年半だけの主都となった名護屋を舞台に繰り広げられた天下人最期の仕事と人間ドラマ。
内容説明
舞台は大坂、京、名護屋…秀吉に巻き込まれる人、人、人。秀吉暗殺を企てる若き朝鮮人陶工・カラク。神出鬼没の謎の女性・草千代。博多復興に身を捧げた豪商・神屋宗湛。出兵の先駆けを務めるキリシタン大名・小西行長。秀吉なき世を構想する・徳川家康。いま明かされる天下人、晩年の胸のうち。歴史的快挙か天下の愚策か―朝鮮出兵をめぐる圧倒的人間ドラマ。
著者等紹介
門井慶喜[カドイヨシノブ]
1971年、群馬県生まれ。同志社大学文学部卒。2003年、「キッドナッパーズ」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。2016年、『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で日本推理作家協会賞(評論その他の部門)を受賞。同年、咲くやこの花賞を受賞。2018年、『銀河鉄道の父』で直木三十五賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
266
なぜ秀吉は朝鮮出兵を行ったのか? この謎を主軸にしつつ、キリシタン大名小西行長、博多商人神屋宋湛、唐津焼職人カラク、謎の女性草千代などの目を通して、戦いへと狂騒する時代を描きます。なぜへの答えは、秀吉が家康と三成に語るんですけど、ほお、そういうことか、さすが木下藤吉郎という感じですね。それよりも、時代の波に翻弄される、人々の人生の儚さが心に染み入ります。最終章の余韻にジーンときます。福岡の名護屋城跡に行ったことのある人は、なおのことそう感じるでしょう。なごやの事もゆめの又ゆめ。2021/08/21
starbro
230
門井 慶喜は、新作中心に読んでいる作家です。 書き尽くされているテーマなので、著者の新解釈や骨太の人間ドラマを期待したのですが、あっさりとしていました。 https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210524/se1/00m/020/003000d2021/06/01
trazom
117
タイトル通り、「豊臣秀吉が、なぜ朝鮮出兵/唐入りをしたのか」を巡るドラマである。恩賞とする土地確保、勘合貿易、世界統一など多くの理由が語られるも、謎に満ちたこの愚挙は、小説家にとって想像力を掻き立てられる題材なのだろう。尤も、この作品で、説得力のある論考がなされたとは思えないし、何より、多くの要素を詰め込みすぎで、小説として散漫な印象は否めない。参考になったのは、どうもイメージの湧きにくかった名護屋城がこういうものだったのかと納得できたことと、堺衆に対抗した博多衆の雄・神屋宗湛の役割が理解できたこと。2021/07/20
パトラッシュ
114
秀吉の朝鮮出兵ほど理由不明の戦争はない。秀吉が登場する小説やドラマでも老耄や狂気、征服欲など様々な解釈を出していた。しかし今作の「いくさがしたかったから」との視点は、他の説を退けて納得させられる。信長に仕え野戦軍人として出世した秀吉に、戦場以外の青春はなかった。鉄砲の発射音や剣戟の響きは子守唄であり、血と硝煙を極上の香りとして生きてきた戦争プロフェッショナルの自分が天下を統一したら、戦いが消えてしまった世に愕然としたのでは。軍人上がりの独裁者にとって国を挙げた外国遠征とは、強烈な麻薬のように作用したのだ。2021/06/22
のぶ
110
豊臣秀吉が天下統一をした後に、朝鮮出兵に至る経緯を綴った物語だった。どうして国内を天下に治めただけでは足りなかったのか?なぜこれほどの野望に満ちたプロジェクトを成し遂げなくてはならなかったのか?門井さんは分かりやすく、読みやすく、丁寧に描いていた。戦国時代の最終盤で、世に出た戦国大名をオールスターで登場させ、その他にも博多復興に身を捧げた豪商、神屋宗湛や千利休も話に一役買っている。それにしても、あの時代に兵を大陸に派兵する必要があったのか?分かりやすい作品ながらも、「なぜ秀吉は」を思った。2021/05/29