出版社内容情報
国家の威信を賭けた壮絶な新薬開発競争が続く。
医療における〈神の領域〉に踏み込んだ者たちを待ち受ける運命は?
内容説明
国家間の競争に巻き込まれてゆく「フェニックス7」、研究施設周辺では謎の失踪事件が頻発していた。真相を追う刑事はその全貌に戦慄する。果たして、生命の神秘という神の領域に、我々は拙速に突き進んでよいものだろうか。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
227
上下巻、550頁、完読しました。認知症の深刻さを考えると十分ありそうなストーリーでした。マッド・サイエンテストの暴走が医療を進歩させることは事実(日本の731部隊等)だと思いますが、コロナウィルスのワクチンも簡単に作れない現状を考えるとまだ先の未来の気がします。それよりも尊厳(安楽)死の早期法整備を希望します。 https://books.bunshun.jp/articles/-/53382020/05/24
sayan
64
本書の「AMIDI」は大手町にある「AMED」がモデルか。厚労所管かと思いきや、なんと内閣府。厚労、文科、経産の個別支援脱却し基礎研究から実用化までの一貫体制を通じて、健康長寿社会の形成を目指す。主人公麻井はその渦中の人。他方、研究者と当事者がカット&トライ手法を正当化するロジックが重たい。かつて日本学術会議は、普遍的ではない判断基準に頼らざるを得ない局面があり、多様な問題意識群が形成されることで、普遍的な価値体験を調和と統合によって生み出すのは難しいと、生命科学の全体像をまとめた。本書の結末を予見する。2021/05/16
Yunemo
58
下巻になったら、警察小説かと思わせるような、あまりに現実的になりすぎて。上巻から期待した展開とはちょっと違ってて。でもこの分野、ここまでが限界なのかも。副題のSANCTUARY、脳科学として、この域には入り込めないのかも。でも上巻から積み上げた意図がこの終わり方じゃ、欲求不満だけが残されて。唐突に、特定秘密保護法が適用されて、結局はうやむや感。今まであまり気にも留めてなかったけど、いろんな分野で突然に、その時代のトップの考え方によって適用されてしまうのか、という漠然とした不安感がしこりとなって残ります。 2020/04/26
まつうら
54
ぐずぐずと認可を引き延ばす厚労省が悪いのであって、患者を救いたい自分は正しいのだという篠塚たちを、勝手な思い上がりだと断ずるのは難しい。認知症に苦しむ患者とその家族から、無認可であることを承知の上でフェニックス7の投与を懇願されたら? それがもし自分だったらどうするだろうか? 篠塚や大友と同じ判断をするのではないかと思う。ピンピンコロリが理想と言われて久しいが、生きている間は健康で尊厳を保ちたいと思うことは人間の権利だ。決して老人のわがままではない。そんな著者の主張が聞こえてくる作品だ。2023/01/22
クリママ
53
研究者の思い、出資家の思惑、そして、国益となるはずの研究のアメリカへの移行。政府系医療ベンチャー支援機構に招き入れられた麻井が「ハゲタカ」の鷲津を彷彿とさせたが、右往左往すあるばかりでこれといった活躍がなく、その他の人物についても誰も主役になりえない。着地点もよく見えない中での軟着陸。医療サスペンスでと警察ミステリーを両方楽しめたし、新しい医療の開発とその治験の難しさについて読むことができたが…2022/11/19