出版社内容情報
余命1年。突然、末期がんを宣告された出版社役員の菊池は、治療を放棄し、ある確信をもって神戸に移り住む。病は果たして治るのか?圧倒的な筆力で描く渾身の長編!
内容説明
五十三歳、大手出版社役員の菊池。医師の妻とは五年前に離婚して、双子の娘たちも独立、再びの独身生活を謳歌していた。同期の出世頭で、次期社長と目されていたが、ある日、末期の膵臓がんに冒されていることがわかる。医師から「余命一年」を宣告されたが、治療を受けることはせず、直感に従って神戸に移住し…。この世界と人間の営みを明かす白石文学の集大成!
著者等紹介
白石一文[シライシカズフミ]
1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビューする。2009年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞、2010年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
296
いろいろな意味で一気読みさせられました。白石さんのこれまでの集大成と言えるのでは。私自身の大切な人たちに出会ってきたきっかけに想いを馳せたり。偶然なようでいて、ちゃんと意味があったのでしょう。恋こそが人生の王道、と言い切りながらも、男と女は、心では決して結びつけない...白石さんのシニカルな一面を見た作品でもありました。ぜひご一読を。ただし元気なときに。2017/04/22
じいじ
114
これは面白い。共感する白石哲学が満載です。余命1年の末期がんを宣告された53歳の主人公。「生」へ挑む男に絡む女たちが神秘を秘めた物語。前半は、死への恐怖、自分との葛藤に胸が詰まった。しかし、ともすると陰鬱になりがちな「死」の問題を前向きに書き上げた巧さは流石だ。仕事を辞し、残す人生に立ち向かう姿勢、腹の据わった潔さに敬服する。「死にたくない」とは思っていない、ただ「生きたい」と思う、には共感。自暴自棄におちいらず懸命に「生きること」を求める主人公に活力を貰った。白石一文好きにはお薦めの一冊です。2017/03/22
里季
78
長かった。末期の膵臓がんに冒された主人公の男が、化学治療を断り、昔一度だけ電話で話しただけの女の「癒す力」を求めて探しあてに行く。とんでもないことのように思うが、死を前にした人というのは火事場の馬鹿力のようなものが出るのか、生き急ぐというのか、周りの者がハラハラすることがある。10年前に亡くなった夫もそんな感じだった。そっとしておくほかはなかった。さて、このお話。白石さんお得意の数奇な運命を描いている。面白いといえばそうも思えるのだが、あまりに偶然が重なりすぎていてありえなさ過ぎてちょっと鼻白む。2016/02/11
Yunemo
60
何と表現したらいいのでしょう。全く持って不可思議な物語。がん告知による迫りくる死。どうやってその時を迎えるんだ。この流れで始まったのに、いつの間にか不思議な世界へ。死とは何、これがメインなんだろうけど。違和感を感ずるのはもう一つ、環境、状況の描写は細部まで細かくこだわり、心情描写、互いの想い合いについては割合あっさりと。前作「彼が通る・・・・・・」では、夢の中でであり、現実との乖離が示されたけど、本作は最後まで現実世界で描き切っている。消化しきれないまま読了というのが本音。でも、これっていいよね。2014/04/29
cryptoryou
50
ガンに罹り、余命1年と告知を受けた主人公が、自らの生と死を見つめながらも、人と人の縁と繋がりに、「運命」と「神秘」を紡ぐ物語。白石一文さんらしい、死生観が詰まった作品でした。途中若干間延びした感じを受けましたが、それでも終盤の展開は圧巻で素晴らしかった。2015/06/30