内容説明
悩み、苦しみ、成長してゆく、師匠と弟子たち。平岩弓枝の筆致が生みだす、今までで、いちばん美しい「西遊記」。大人気の挿絵も収録。
著者等紹介
平岩弓枝[ヒライワユミエ]
1932年東京都生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒。1959年『鏨(たがね)師』(文藝春秋社)で直木賞受賞。91年『花影の花』(新潮社)で吉川英治文学賞。98年、菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はたっぴ
102
釈迦如来様のお言いつけで天竺へお経を取りに行く三蔵法師と悟空達。大人になってこれほど深みのある西遊記を楽しめるとは思わなかった。約10年ぶりの再読で清らかな師弟愛に涙ぐむ。三蔵がきかん坊の悟空や八戒への接し方に悩みながら、時おり弱音を吐く姿に親近感を覚え、乱暴者の悟空が師匠に心を開いていく姿に胸を震わせた。武術を使えない弱々しい三蔵を守りながらの道行きが、天上の神々を巻き込み、彼らの結束力を高めていく。三蔵の肉を食らえば不老長生となることを知った魑魅魍魎に狙われっぱなしの一行。天竺までの道のりは険しい。2017/06/04
ちぐ
44
子供の頃テレビドラマで何となく観ていただけの西遊記。改めて読んでみたらとても良かったです。西遊記の孫悟空ってとてもやんちゃで暴れん坊な印象がありましたが、イメージは一変しました。なんと言っても三蔵法師と悟空の師弟関係が素晴らしい!それなのに妖怪の企みによる悟空の破門…そしてその誤解が解けるまで…泣けましたねー。瓢箪が出てくるお話は、昔テレビドラマで観た内容を覚えてました。堺正章さんの孫悟空も懐かしいなぁ。下巻が楽しみだ。2016/02/16
そうたそ
33
★★★★☆ いつかしっかり読んでみたいと思っていた西遊記。今年の鴨川をどりの演目が「芙蓉西遊記」ということもあって、それを機に読んでみた。全体としていえばストーリーは原典に忠実ながらも、平岩さんなりの味付けがされているといった感じ。例えば原典で冒頭にある悟空が大暴れし岩に閉じ込められるシーンは大胆にカットされている。この作品で主として描かれているのは悟空と三蔵の師弟愛であるような気がする。それが作品の幹としてあるせいか、妖怪と出会いそれを退治するという繰り返しのようなストーリー展開もさして気にならない。2015/05/09
金吾
28
○過去に読んだ西遊記とややイメージが異なりますが、悟空と三蔵法師の師弟愛と心のやり取りが何とも言えずホッコリしていていいかんじです。また挿し絵も可愛らしいです。2023/04/17
ともこ
25
昔話のレベルで親しんでいた「孫悟空」。大人になり中島敦「わが西遊記」万城目学「悟浄出来」を経て本書に。二段組みの長編だが、次から次へと飽きることなく読み進めたのは作者の腕のなせる技か。疑うことを知らない三蔵法師、そんな師を慕う純真な孫悟空、地味だが真心ある沙悟浄、気高い白馬、まあ猪八戒もそれなりに、読み終わる頃は皆大好きになった。襲いかかる妖怪たちにもそれぞれ繋がりのある生い立ちや事情があることもわかった。そんな妖怪たちにも温かく再生の道を示す観音様に手を合わせたくなる。おもしろかった。2023/10/22