内容説明
80年代ブリスベン郊外。少年イーライは犯罪と暴力はびこる町に暮らしている。母親は薬に溺れ、母に薬を教えた売人が父親代わり。本当の父の顔はもう覚えていない。兄はある時から口をきかず、唯一のまともな大人は元脱獄犯のスリム。親友であるこの老人に人生の真髄を教わりながら、いつしかイーライは“世界を変えることのできる”新聞記者になりたいと夢見るようになるが―全豪50万部突破、オーストラリアabia年間大賞受賞作。インディ・ブック・アワード2019ブック・オブ・ザ・イヤー受賞。MUD Literary Prize 2019金賞受賞。New South Wales Premier’s Literary Awards読者投票部門・新人部門受賞。
著者等紹介
ダルトン,トレント[ダルトン,トレント] [Dalton,Trent]
『ザ・ウィークエンド・オーストラリアン・マガジン』の記者で、『クーリエ・メール』の元アシスタント・エディター。優れたジャーナリストに贈られるオーストラリアのWalkley Awardを2度、Kennedy Awardを3度受賞。『Boy Swallows Universe』で小説家デビューを果たす
池田真紀子[イケダマキコ]
英米文学翻訳家。東京都生まれ、上智大学法学部卒。訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
163
読友さんたちが絶賛なので、苦手な海外文学に久々に挑戦…正直言って序盤は辛かった…慣れていないせいもあるが修飾が多い文章が頭に入ってこず「早く先に進んでよ~」と思いつつ我慢のページ捲り(;^ω^)80年代ブリスベン郊外の描写に親しんできた中盤からは展開も段々と早くなって主人公・イーライに寄り添いながら楽しめるようになった。イーライと個性的な人間達との関係も目に浮かぶようになり「どうなるの?」と興味をそそる終盤は面白さが加速したが、少々長くも感じた。著者の実体験がベースだという訳者の後書きにはビックリした。2021/08/27
アン
116
1980年代、ブリスベン郊外。暴力と犯罪にまみれた町で暮らす少年イーライ。些細なディテールも見逃さず、感受性の鋭い彼の瞳に映る世界は何と色彩豊かなことでしょう。親友の伝説の脱獄犯、空中に指で文字を綴る兄、父親同然の麻薬の密売人。ジャーナリストを夢見るイーライですが、ある日過酷な状況に陥り…。老人の人生訓、兄の予言めいた不思議な言葉、囚人への手紙など伏線が散りばめられ息を呑む終盤へ。善良さと邪悪さへの疑問。試練を乗り越え、世界へ羽ばたこうとする信念と勇敢さに心を揺さぶられます。光を宿す家族の絆と愛の物語。2021/05/12
chiru
114
読友さんのレビューに感動して読んだ本✨ 80年代のブリスベン郊外は犯罪と暴力の町。そこで暮らすイーライは感受性豊かな男の子。義父と母はドラッグ漬け…兄は指で空中に文字を綴る…。彼らとこの町で生き抜くために元脱獄犯の親友に教わったこととは…?少年の“ディテールのものさし”は善悪を超えて世界を彩る。悪人にみえて良識を持ち、完璧に見えて不幸な人がいて、可哀想に見えて誰よりも幸せな人がいる。その意味を知ったとき、胸に温かいものが流れ込み、それを誰かに伝えたい気持ちになりました。読んだあとの充実感が最高🌈★52021/08/19
ずっきん
113
うわあ、なんてこったい!今年ぶっちぎりだ。面白いなんてもんじゃなかった。少年視点の成長譚と侮るなかれ。ヘロインの密売人の息子達。ベビーシッターは伝説の脱獄囚。筆致はディテールと色彩の豊かさにあふれ、それはそのまま物語の核となる。後半の疾走感は怒涛と冠するにふさわしい。初っぱなで鷲掴みされ、その最後まで墜落することなく、至福の、極上の、とにかく、とびっきりの読書体験だった。この歳で青臭い少年の悲喜に引きずり込まれるとは思いもしなかったよ。これぞ物語の醍醐味。出会えてよかった。青臭くって瑞々しい翻訳にも感謝を2021/07/10
美紀ちゃん
98
イーライはおしゃべりで、お話を作るのが得意でちょっと泣き虫。オーガストはひと言も話さないが賢い兄で頼れるアドバイザー。母の恋人ライルは父親も同然。麻薬密売組織に連れ去られなぜ消えてしまったのか?真実を探しに行く。ベビーシッターで年齢差60歳の親友スリムからたくさんのことを学ぶ。みんなでハグ!愛情や信頼を感じる家族。けれど世間から見たら悪人と呼ばれるのかもしれない。本書の半分は著者が実際に体験したことと知り、驚いた。12~19才までの少年イーライの成長と家族の物語。2021/11/22