出版社内容情報
ミック・フィンレー[ミックフィンレー]
著・文・その他
矢沢聖子[ヤザワセイコ]
翻訳
内容説明
時は1895年。世間が名探偵シャーロック・ホームズの活躍に沸く中、苦虫を噛み潰す男がいた―彼の名はアローウッド。ホームズと同じ私立探偵だが、残念ながら回ってくるのはホームズには頼めないような曰くつきの依頼ばかり。助手のバーネットも機嫌の悪いボスにやきもきする日々だったが、ある日美しきフランス人女性が「兄が失踪した」と助けを求めてくる。それは最悪な殺人事件の始まりで―。
著者等紹介
フィンレー,ミック[フィンレー,ミック] [Finlay,Mick]
グラスゴー生まれ。心理学科で教鞭を執り、ポリティカル・バイオレンスや言語・非言語行動についての研究をした。その前は、屋台店主やホテルのポーター、国民保健サービスでの業務など様々な職を経験した。現在はブライトンに家族とともに暮らす
矢沢聖子[ヤザワセイコ]
英米文学翻訳家。津田塾大学卒業。幅広いジャンルの翻訳を手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あさうみ
45
癇癪持ちだが憎めない鋭い観察眼探偵アローウッドと、ツッコミを入れつつ補佐にまわるバーネットの悪友みたいなコンビが絶妙。ユーモア含む会話、文章もなかなか好き。ただ、アイルランド独立戦争や1895年あたりの時代背景の知識があればもっと楽しめるだろうと悔やまれる。2019/01/19
しゃお
32
シャーロック・ホームズの影で活躍する探偵アローウッド。ホームズと違い癇癪持ちで体型もふっくら。美しい女性にも暴力にも弱い。けれども、自身が関わった事件で犠牲者が出ると、どんな手を使っても犯人をつきとめようとする事こそが彼の矜持なのでしょう。相棒となるバーネットとのやり取りも楽しいが、事件そのものはヴィクトリア時代にはびこる問題を映し出して重い。それにしてもホームズに敵対心を燃やすだけでなく、特にボヘミアの醜聞の真相を推理(妄想)する場面が何よりもアローウッドの探偵としての資質が垣間見れるようで面白かった。2019/05/25
うたかたの日々
30
助手のバーネットの語りで話は進んで行きます。シャーロック・ホームズの影で目立たないそして恵まれないアローウッド、嫉妬からがらシャーロックの事件をうまいこと取り込んでネタにするあたりクスクスしてしまう面白さ、そして人探しから始まり、社会的事件にまでスッキリ正義が勝ちという終わり方ではないが話の展開もテンポよくて、一気読みしました。時代背景のおかげで人間の良心といか、今よりも曖昧な部分も多いがそこも魅力的書かれていて楽しめた。続きがぜひ読みたい。2020/01/28
ゆう
29
シャーロック・ホームズの大活躍により彼の陰に隠れてしまい、嫉妬ジリジリな探偵アローウッド。助手のバーネットと共に失踪した兄を探してほしいという依頼を受ける。話が進むにつれて重い背景が見えてきて辛い。アローウッドよ、それはどうか…って思うところもあったけど、語り部バーネットのおかげか嫌いになりきれない。それにしてもバーネットは生傷が耐えないねぇ。。アローウッドが考えたホームズのあの真相がなかなか面白かった。2019/07/04
鐵太郎
20
シャーロック・ホームズが活躍した時代、ホームズを意識し嫉妬する市井の探偵ウィリアム・アローウッドがいた、という設定の物語。タフで頭脳明断な助手ノーマン・バーネットの視点で語られます。とあるフランス人女性の兄を探して欲しいという依頼から始まったお話は、当時の英国を揺るがす政治問題にも絡む事件となります。アローウッドはどのように解決したのか。お話は、ホームズ譚のような頭脳で解決するミステリと言うより腕力でなんとかするハードボイルド小説ですね。ホームズ・パスティーシュとは別と考えた方が良さそうです。2023/06/16