内容説明
米国南部の町で自動車修理工場を営むボーレガード。裏社会で語り継がれる伝説のドライバーだった彼は、足を洗い家族とまっとうに暮らしていた。だが工場の経営が傾きだしたことで運命の歯車は再び狂い始める。金策に奔走するボーレガードに昔の仲間が持ちかけてきたのは宝石店強盗の運転役。それは家族を守るための最後の仕事になるはずだった。ギャングの抗争に巻き込まれるまでは―。2021年マカヴィティ賞、アンソニー賞、バリー賞、3冠!
著者等紹介
コスビー,S.A.[コスビー,S.A.] [Cosby,S.A.]
米国ヴァージニア州出身。クリストファー・ニューポート大学で英文学を学んだのち、警備員、建設作業員、葬儀場のアシスタントなど様々な職業を経て作家に。2019年に短編“The Grass Beneath My Feet”でアンソニー賞最優秀短編賞を受賞。2020年に発表した『黒き荒野の果て』はマカヴィティ賞、アンソニー賞、バリー賞など数多くの賞を受賞し、高い評価を得ている
加賀山卓朗[カガヤマタクロウ]
愛媛県生まれ。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
117
「走れ、無謀な男、走れ」。エピグラフのこの言葉にググっと惹き寄せられた。そして全てを読み終えた時、巻頭へ戻り、ここから湧き上がったその感情に間違いはなかったと叫ばずにはいられなかった。アメリカ南部を舞台としたクライム小説。背景にあるのは根深い貧困(黒人も白人も)。でもそれよりもっと原初的なモチーフに取り憑かれた。ボーレガードが親父さんを追う姿だ。追い掛ける、追い掛ける、絶対に追いつけない存在を。その先が破滅でもひたすら荒地を追走する。それは自分のためなのだ。そして彼が辿り着いた果てを目を見開いて見つめた。2022/03/08
遥かなる想い
110
2023年このミス海外第6位。 米国のノワール雰囲気満載の作品である。 典型的なクライムストーリーだが、ギャングの抗争に巻き込まれるボーレガードと 彼の周辺の人間模様が丁寧に描かれて 面白い。カーレースシーンも含めて 謎解きよりも 映像的な作品だった。2023/01/06
のぶ
110
良くできたクライムノベルであり、汚れた家族小説の雰囲気を漂わせた作品でもあった。主人公のボーレガードは、アメリカ南部の町で自動車修理工場を営んでいた。かつては裏社会で伝説のドライバーとして汚い仕事もしてきたが、今は足を洗い家族とまっとうに暮らしていた。しかし、工場の経営が傾きだしたことで運命の歯車が狂い始めてきた。そこへ昔の仲間が持ち掛けてきたのが宝石店強盗の運転役だったが・・。冒頭から激しいカーアクションで一気に引き込まれる。ボーレガードの一家も皆一癖ありユニーク。シンプルながら読ませる物語だった。2022/03/24
ずっきん
101
「古い革袋に新しい葡萄酒」至言である。チンケなくらい王道なくせに斬新なのだ。著者は初っぱなから読み手の胸ぐらを掴んで離さない。車にもWSにも関心がないわたしを夢中にさせる描写に痺れまくる。文字が、文章が踊る。南部、貧困、負の連鎖が巧妙に練り込まれた道で、車はまるで生き物のように跳ね回る。話題作ながら翻訳は諦めてたところ、加賀山訳で刊行と知って期待値がさらに爆上がりしてしまい、ハードル上げすぎたかと心配だったが、全くの杞憂だった。著者の高笑いのようなエンジンの爆音が響きまくる。さあ、アクセルを踏み抜け!2022/03/07
オーウェン
80
初読みの作家だが、伝説でもあるドライバーが金のため染めた強盗稼業。 そのためギャングからの復讐が迫る。 クライムノベルの種だが、キャラが明確なため読み応えがある。 ボーレガードの家族と生活を天秤にかける様。 黒人社会の背景も相まって、子供たちにも強く生きろと呼びかける父親ぶり。 そして必要とあれば殺しも辞さない非道さ。 ラストはすべてを清算させるため愛車のダスターを駆る。 作風がすごく好みなので、2作目も是非読んでみたくなる。2023/06/01