内容説明
1943年6月、ナチス支配下のベルリン。ユダヤ人少年トーマス・ジーヴは、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所に送られた。わずか13歳だった彼は、3つの収容所を経て生き延び、22カ月後ついに解放の日を迎える。そして、記憶の新たなうちにすべてを伝えようと、絵筆をとった。少年のまなざしで見るホロコーストとは、どのようなものだったのか―大人には語り得ない真実が、そこにはあった。
目次
プロローグ―まだ見ぬ未来(一九三九年、ベルリン)
第1部(シュテティンとボイテン(一九二九~一九三九年)
ベルリン(一九三九~一九四一年)
ベルリン(一九四一~一九四二年)
ユダヤ人一掃(一九四三年))
第2部(アウシュヴィッツ=ビルケナウ;隔離;レンガ積み学校;生き残るための闘い;極度の消耗;絶望の中で)
第3部(混沌の中のやさしさ;古参囚人として生きる;変化の風)
第4部(自由はなお遠く;グロース=ローゼン強制収容所;撤退;ブーヘンヴァルト強制収容所;解放のとき)
エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Cinejazz
15
ユダヤ人医師を父にもつドイツ生まれの少年トーマス・ジーヴは、ナチスの迫害を受け13歳にしてアウシュビッツ強制収容所に移送された。想像を絶する苦難の収容所生活を奇跡的に生き延びたトーマスは、アウシュビッツ撤退の時に持ち出せなかったスケッチ画の記憶 ― 収容所到着、選別、懲罰、飢餓、感染症、害虫、鉄条網、労働、点呼、反乱、絞首台、撤退、解放に至るまでの人生の22か月を描き出し、後世に伝えることを使命に生きる証しが本書となった。 少年の眼差しで見たホロコーストが、今なお世界を脅かし続ける悲惨な現実と重なり合う。2022/04/24
トト
5
第一次世界大戦、強制収容所に送られたユダヤ人トーマス・ジーヴが、ホロコーストについて如実に語ったもの。1929年誕生から1943年に逮捕される(ユダヤ人だからという理由で)までと、強制収容所での生活から解放まで、時代の変遷が個人の目線でリアルに描かれます。残酷な少年時代を生き延びた人生は、読み物として面白い冒険譚です。その背景に、沢山の遺体がなければ、ですが・・・。彼は2022年の今もご健在です。2022/02/10