内容説明
「妻になってほしい」―シリーナは耳を疑った。だが、セイバーはいたって真剣な表情をしている。彼は民主国家としてあらたに誕生したカラストニアの若き大統領。大学教授の終身在職権が得られるかどうか、バージニア州の屋敷でやきもきしていたシリーナには、ふってわいたような話だった。父親が故国カラストニアの駐米大使をずっと務めてきた関係で、セイバーとは面識がある。少女のころ、あこがれを抱いたことも。しかし、カラストニアの伝統とはいえ、親が決めたよく知りもしない相手と結婚するなんて考えられない。彼はわたしのキャリアで祖国に貢献してほしいと言った。そんなの無理だわ。いきなりファーストレディになれと言われても。