内容説明
思考を形づくるべき言葉を喪ったせいで、思いを受け取ることも伝えることもできず、ただ荒れ狂うばかりのクリスチャン。しかし、マディーだけは信じていた。彼が昔と変わらぬ知性と心を保っていることを。彼の救済こそが神に授けられた使命であると信じ、マディーは周囲の無理解と戦いながら献身的な介護を続ける。唯一の理解者たる彼女にクリスチャンは一途な愛を捧げるが、マディーはやがて信仰と世俗の愛のはざまで揺れる自分と直面することになる…。究極のテーマに挑む至高のロマンス。
著者等紹介
キンセイル,ローラ[キンセイル,ローラ][Kinsale,Laura]
地質学者として石油会社に勤務したのち、1986年に『The Hidden Heart』でデビュー。91年に『Prince of Midnight』でRITA賞(年間最優秀ロマンス)を受賞、05年には『黒き影に抱かれて』(二見書房刊)で同賞長編ヒストリカル部門の最優秀賞を受賞
清水寛子[シミズノブコ]
英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たまきら
28
天才的な頭脳を持ちながらも、ある種の脳卒中と思われる症状で言語力を損なわれ、悲惨な生活を送ってきたお公爵。唯一の光である女性は彼よりも信仰を選び(盲信的な母を蔑んでいる彼には耐えられないんです)、家族は彼を権威ある立場から引きずりおろそうとし…後編は彼の苦境と孤独な人生に同情せずを得ません。傲慢なお貴族様が最後に公の場で彼女への愛を叫ぶシーンが素敵です。エピローグにもほっこり。新しいことを知ることができ満足でした。ありがとう、読み友さん。2018/06/04
romance_holic
2
「黒き影に抱かれて」発売時に、flower from the storm(今作)はもっといいよ、と聞いて読みたいと思っていました。 前作と共通しているのは生活や信条、心情、人生にまで宗教が深く根をおろしている人物が登場しているところ。今回のヒロインはクエーカー教徒です。身分が違い、別の教義や信仰、価値観をもち、別の世界で生きている人物たちをそれぞれ描いて、衝突させていて、共に生きるというのが今作の大きなテーマのひとつなのかなと感じました。2010/04/21
黒崎ディートリッヒ
2
言葉を話せなくなったクリスチャンは、自らの意思を伝えられない辛さに陥る。彼を看護し続けるアーキメデアだが、やがて彼女は信仰と俗世の常識の狭間で、悩み苦しむことに・・・・。 ヒストリカル・ロマンス。廃人公爵と、ちょっと狂信者っぽい看護師の波乱に満ちた恋の物語。ヒーローのクリスチャンが廃人なのは「言葉を失った」せいなのですね。では本作のテーマは、狂気と恋だというよりは「言葉なくとも伝わる愛」でしょう。読んでいるとクリスチャンが、普通の心を取り戻して行く様子が彼の台詞から見えてくる感じがしました。 2014/10/16
まみ子
2
ヒロインの考え方に偏りはあるものの、ヒーローの一途さにもう、キュンキュンですよ。良かった…。2013/10/06
zawa
2
すごく余韻に浸れるお話でした。公爵のマディーへの一途な想いが切なくて胸が痛いくらい。すごいお話だった。幽霊の使い方が好き。2011/06/26