内容説明
ケンブリッジ大学が明日から長期休暇に入るという夜、フィッシャー・カレッジ内で門衛が射殺された。副学寮長のサー・リチャードは、一見単純に見える事件に複雑な背景があることに気づき独自の調査に乗り出すが、やがて帰省した学生のトランクから第二の死体が発見され…。めくるめく推理合戦、仮説の構築と崩壊、綿密きわまる論理的検証、そして単越したユーモア。考古学教授を本職とする著者がものした、本格ファンの魂を揺さぶる幻の40年代クラシック・パズラー、ついに本邦初訳なる。
著者等紹介
ダニエル,グリン[ダニエル,グリン][Daniel,Glyn]
1914年生まれ、1986年没。ケンブリッジ大学卒業後、考古学を専門として母校で教鞭を取りつつ、本格ミステリーとしては長編を2冊、短編を2編残している
小林晋[コバヤシススム]
1957年、東京生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
75
一人の探偵が「真実はいつも一つ」というような推理モノが好きな人にとっては壁本になります。しかし、モース刑事シリーズや物集高音作品、『虚無への供物』や刀城言哉シリーズ、天帝シリーズなどの数多くの推理を連発して、それらの齟齬を潰して尤も粗のない推理を求める作風が好きな人には堪らないと思います。「黄色い納屋」には『黄色い部屋』を思い出して思わず、ニヤリ。でも最後は・・・馬っ鹿でぇい(笑)2016/11/08
本木英朗
18
英国のオクスフォード大はコールにしろイネスにしろ、面白い作品であるが、ケンブリッジ大にも一人の作家がいるため、一矢報いた、かもしれない。それがグリン・ダニエルである。まあ長編と短編が二編ずつしかないのだがね。俺は今回が初めてなのだけど、やはりすごいよ、うん。フィッシャー・カレッジ内で明日から長期休暇に入ろうとしていた夜、門衛が射殺された。しかも帰省中の学生のトランペットからも第二の殺人が……という話である。いやー、難しかったねえ。とにかく読め。それしかないって。うーん、いいねえ、グリン・ダニエルは。2019/07/20
Naoko Takemoto
9
新型コロナの陰鬱な気分からか、最近猟奇的なミステリに手が伸びなくなり、安楽椅子かトリックかパズルかクラシックかと思い、手に取った。楽しい読書時間だった。2つの殺人が略奪愛に絡み、警察VS考古学者の知恵比べのような平行線が「ひとりごち」ていた。そう、ワクチン接種後の安静時間にもってこいの一冊だった。2021/08/29
おふねやぎっちらこ
2
結構面白かったですね。クラッシックミステリーで英国流ユーモアを感じたかなあー2025/02/07
madhatter
2
いかにもな人物の犯人疑惑が次々と否定されてゆく構成はおもしろいのだが、それと共に事件そのものが大学と読み手からどんどん離れていってしまうのはどうなんだろう。犯人と動機が大学と関わりが薄いこともあるし、疑惑否定の根拠も取って付けたようなものにしか思えなかった。加えて、動機に対してトリックのスケールがあまりに大きすぎて、悪い意味で絵空事という印象を受けた。つまり、解説で言われているほどすぐれた作品とは言い難い気がする。2012/09/10