内容説明
ポッツヴィル、人口1280。この田舎町の保安官ニックには、心配事が多すぎる。考えに考えた結果、自分にはどうすればいいか皆目見当がつかない、という結論を得た。口うるさい妻、うすばかのその弟、秘密の愛人、昔の婚約者、保安官選挙…だが、目下の問題は、町の売春宿の悪党どもだ。思いきった手を打って、今の地位を安泰なものにしなければならない―饒舌な語りと黒い哄笑、突如爆発する暴力!人間の底知れぬ闇をえぐり、読者を彼岸へとみちびく、究極のノワール。
著者等紹介
トンプスン,ジム[トンプスン,ジム][Thompson,Jim]
1906年生まれ。職業を転々としながら作家活動をつづけ、42年に初長編を出版。49年に犯罪小説に転じ、その後、ペイパーバック・オリジナルを書きとばす。50年代なかば、S・キューブリックの映画製作にかかわる。小説が斜陽となると、TV脚本にも従事。作品がすべて絶版の状態で、77年に死去。死後、ようやく作品の再評価がはじまった
三川基好[ミカワキヨシ]
1950年生まれ。早稲田大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ずっきん
84
いまさらだけど、べらぼうに面白かった!『ノワールの金字塔』の惹句に異論も異存もございません! 保安官ニックの造形が素晴らしくて、初っぱなからグイと引き込まれてしまう。ひたすら人間の業が醜悪に転げ回るだけの物語が、なんでこんなにも面白いんだろう。読者に対して「許してやれよチラ」「わかってやれよチラ」的な求めが一切ないからかな。その辺りが自分が好む小説とそうでないものの境界線のような気がする。解説の『スウィフト感』ってのを読んで、色々と腑に落ちた。これは『ゲッタウェイ』を再読しなければ!2021/07/01
Small World
26
以前から読んでみたかったジム・トンプスンを初読みでした。ちょっと前の作家さんですが、「ゲッタウェイ」の原作者で、キングやタランティーノの敬愛する作家と来れば、面白くないはずがありません。主人公の軽妙な語り口に騙されながら、そのサイコパスぶりに戦慄です。もう一人のCに対する逆説的な語りも静かに強烈で、これってアメリカで出版されて大丈夫だったの?って、心配になるほどでしたw。(このミス2001海外編第1位作品)2019/06/02
ふるい
25
傑作!最高!何のために生まれて、何をして生きるのか、わからないまま終わる、そんなのはいやだ。と思ってあくせくして生きるけど、結局わからないもんはわからないんだなぁ。不気味でユーモラスな主人公ニックの語りが面白かった。トンプスン、「安物雑貨店のドストエフスキー」とも呼ばれてるらしい。映画も楽しみ。2019/03/19
けいちゃっぷ
18
人口1280人の小さな町の保安官でありながら殺人にためらいを見せない主人公という点で、前に読んだ『おれの中の殺し屋』と姉妹編みたいな雰囲気。 愚鈍で好人物を装う主人公の、秘められた(眠っていた?)心の闇が突然姿を現す瞬間がゾワゾワしますね。 こいつは俺たちと同じ人間じゃないのか、と思わずにいられないような、よって立つべき地面が揺らぐような感覚。 ブラックコメディでもあるのだけど、雰囲気が素晴らしい。 363ページ 2017/10/15
MATHILDA&LEON
15
人種差別、暴力、不倫、、、ブラック過ぎる題材なのに、重たくなり過ぎないのは、主人公ニックの不可思議な物言い、振る舞いからなのか。それとも、針が振り切れて感覚が麻痺してしまったのか。どちらにせよ、この作品にどっぷりとハマる事は確実。お下劣な表現や言葉が沢山出てくるが、それがこの物語の面白さを引き立てる一つになっていると考えると、なんて奥深い作品なんだ!と驚嘆。他の作品にも興味が湧いた。2014/07/02