内容説明
1965年夏、ニュージャージー州の保養地スパルタで、地元の不良青年レイはキャンプをしていた二人の女子大生に向け、面白半分に発砲した。一人はその場で絶命、もう一人も意識不明のまま四年後に死亡した。1969年夏、中年刑事チャーリーはこの事件の再捜査を決意し、レイに圧力をかけて新展開を図ろうとする。麻薬とセックスを生きがいとする鬱屈した若者レイは、追い詰められた末に…。人間の極限状況をえぐる鬼才ケッチャムが描く静謐にして壮絶なサイコスリラー。
著者等紹介
ケッチャム,ジャック[ケッチャム,ジャック][Ketchum,Jack]
俳優、教師、出版エージェントなどの職業を経て80年に『オフシーズン』で、作家デビュー。スティーヴン・キングが絶賛する作家。本名ダラス・マイヤー
金子浩[カネコヒロシ]
1958年生まれ。翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Bugsy Malone
59
身勝手な理由で女子大生を射殺する青年レイ。そのケッチャムらしいプロローグから4年、罪を逃れたレイは仮面を被り自由気ままに暮らしている。そこからは登場人物各々の視点で物語は続いていくのだが、それぞれの心理が非常に上手く描かれ、アメリカの1969年という時代背景と重なり、さしたる事件が起きる訳でもないのに緊張を解けずに終盤まで引っぱられてしまう。そして追い詰められたレイは。後の作品「老人と犬」のテーマにも繋がるような、衝撃と嫌悪だけでは済まないケッチャム小説でした。2016/09/08
白黒豆黄昏ぞんび
20
「オフシーズン」や「隣の家の少女」とはひと味違ったケッチャム作品でした。まともな人間とまともでない人間を描くケッチャム氏はまともでありまともでないんだろうなあ。不快極まりないレイがだんだん追いつめられていくうちに思わずニヤニヤしてしまいました。サリーやキャサリンなど魅力的な人物がどうなるのか、やっぱりそうなってしまうのか、あ~!ヤダ~!な展開の後のラスト。きっちりおまけをつけてくれるサービス満点な傑作!2013/07/17
ふじみどり
18
殺人鬼って実際このタイプの人間が多いのではないかと思わせられる。紙面上のサイコキラーに期待するミステリアスな部分とか知性とかそういうものから一切かけ離れた、ただ愚鈍で安直な人物が衝動の一つとして人を殺す。レイに捕まった女性三人の多様性がおもしろかったかな。生き残るのがティムも合わせて長いものに巻かれ主義なのも、TVや巷の話題となるムーブメントなニュースの影にかくれたちっぽけな事件としての俯瞰的な見せ方も効果的だった。キャサリンにはケッチャム氏のやさしさを感じる^^2013/05/11
ささやか@ケチャップマン
14
相変わらずの陰鬱さ。ある若者が起こす正気のない悲劇。人間の知性など所詮はオプションに過ぎないのだろう。2016/11/12
ペトロトキシン
12
衝撃的なプロローグから始まり、そしてその事件がまるで無かったかのように淡々と過ぎていく日常生活。それは読者を退屈にさせてしまいかねない平々凡々としたものであったが、まるで最後の爆発に備えてエネルギーを溜め込んでいるかのようにも思えます。しばしの我慢が必要だけどケッチャムはやっぱり裏切りません。読者をきっちり嫌~な気分にしてくれます。レイが最後に殺すのが、かつての当事者以外の全く関係ない人達ばかりなのも理不尽にさせてくれる。だけど、レイも獄中で(多分)HIVで死ぬだろうから溜飲は下げられるってもんです。2015/04/13