内容説明
近未来、T・J・ニュートンと称する男が、ある田舎町に現われた。彼は、死に瀕した星アンシアから“地球に落ちて来た男”だった。たったひとり、ふるさとを遠く離れ、まったく異なる環境に苦しみながらも、ニュートンは、自分が背負った計画に力をつくす。一方、ある地方大学の教授ブライスは、ふとしたことから、驚異的な映画フィルムの存在を知る。それは、従来のテクノロジーを超越した、あたかも地球外文明の産物のようだった…ふたりの奇妙な邂逅と、ニュートンを襲う過酷な運命―デイヴィッド・ボウイ主演、ニコラス・ローグ監督のカルトSF映画の原作となった、ウォルター・テヴィスの代表作。40年の時を経てついに登場。
著者等紹介
テヴィス,ウォルター[テヴィス,ウォルター][Tevis,Walter]
1928年、サンフランシスコ生まれ。59年発表の初長編は、61年『ハスラー』として映画化された。63年に『地球落ちて来た男』を発表後、オハイオ大学教授となり、作家活動から遠ざかる。76年、同作がN・ローグ監督、D・ボウイ主演で映画化される。その後、創作活動に復帰。『ハスラー2』を最後に、84年に肺ガンで死去
古沢嘉通[フルサワヨシミチ]
1958年生まれ。大阪外語大学デンマーク語学科卒。英米文学翻訳家
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ニミッツクラス
31
03年(平成15年)の税抜1619円の単行本初版。本書は扶桑社版で後発17年に二見版も出た。共に16年に他界したDボウイが主演した同名映画のスチルカバーとなる。著者テヴィスの原作は63年で、有名な「ハスラー」の後の作品。破滅状態の惑星アンシアから満を持して地球へ単独で到来した主人公ニュートン。地球移住への橋頭保を築くべくハイテク特許で大企業を興し、利潤を宇宙船の建造に充てる。身体的なハンデを抱えつつ(地球は高重力、高気温)地球で暮らすうちに心情的融和も生じる。異境で孤軍奮闘する男の哀しい話。★★★★☆☆2022/09/08
スターライト
9
人間は果たしてこのまま地球で生きていく価値があるのだろうかと、思わず考えさせられる佳作。たしかにリアルな作品だが、それがあまりに真に迫っていて人間の良さより醜さがどうしても目につく。それでもニュートンは人間に怒りを見せることなく、自らの肉体が傷つけられながらも受け入れてしまう。救いは彼に手を差し伸べる人がいたことだ。バーテンの言葉に対するブライスのセリフが胸に迫る。2016/06/16
そとは夕焼け
7
完璧な相互理解などない事を理解していても自分と重なり胸が痛くなる。孤独・疎外感・世界と自分の不確かさ・喪失・・そういったものを感じる。誰ともわかりあうことはなく、たった一人・・、ニュートンは勿論、教授の若い人を見る目にもそれらが映っていたと思う。だからこそ、教授が生きたいと思っている事は一種の救いともとれるかもしれない。 目のシーンはすごい。あの息が苦しくなるような切迫感。映画も観てみたい。 ただ中盤が長過ぎた気がした。中編くらいがちょうど良い長さだったかも。"大半の人間は静かな絶望の生活を送っている"2012/04/10
izumone
1
ボウイの追悼上映で映画を観たので再読。映画を観た後で読むと,なんかやたら寂寥感が湧く。2016/08/10
fuchsia
1
この作家は救いの無い孤独感を書かせたら凄い。なんというか暗い日曜日みたいなもんか。と言いつつ、ハスラー、ハスラー2の原作者でもある。2004/01/01
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