内容説明
モーリス、きみを愛している―親友クライヴの言葉が、平凡な青年モーリスの人生を大きく変えた。やがて訪れたクライヴとの別離、理想の愛を求める彷徨、そして生涯の恋人アレクとの出会い…同性愛への偏見に満ちた20世紀初頭のイギリスを舞台に、同性愛者として生きることを選んだひとりの青年の魂の遍歴を、イギリス文学の巨匠フォースターが詩情豊かに描く、その衝撃的な内容ゆえに著者の死後まで発表されず、その後ジェイムズ・アイヴォリー監督の手で映画化されて一躍脚光を浴びた幻の名作、待望の改訳決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
51
初EMフォースター。比較的とっつきやすそうなこの小説を手に取る(入手は難しかったが……) 1913年(大正三年!)に執筆されて出版は著者の死後の1971年。1984年に映画化されたBL小説。映画が日本で公開されたあと、男性同性愛の作品のことを『モーリスもの』と一時的にいわれていたのを思い出す。 階級社会のテーマもあるが、さほど古さを感じさせなかった。現在のBL小説については知らないがいまだに通用するのではないかと思う。当時の英国では同性愛は犯罪であり同性愛者の著者の苦悩が主人公たちに投影されている。2016/01/14
ショースケ
29
今より100年ほど前の英国はまだ同性愛に厳しかった。人とは違うと感じ悩みながら、ひたすらみんなと同じように振る舞うモーリス。ケンブリッジ大学でクライブと出会い、心に火がつき幸せなひと時を送るがクライブは変わってしまう。しかし若きモーリスは悩みながら自分を貫く。映画も大ヒットした作品。著者も同性愛者であることから、あの時代同性愛者は誰にも言えず無理に自分を変えようとしたり、自分を責め、どんなに辛く寂しい思いをしていたかよくわかる。読みながらずっとモーリスを応援していた。また文章がとても美しいのもよかった。2019/11/14
スイ
14
良いラストでした。 本当に良いラストでした。 映画を見たのは随分前で、そちらも良かったけれど、私は小説の方が好き。 言葉の選び方の的確さと美しさが見事。2018/02/22
ねむりん
12
若い頃からの愛読書。モーリスが窓から外の闇に向けて「来いよ!!」と叫ぶシーンが胸を打つ。心からの叫びだ。夜の闇に向けてしか発することのできない。泣きたいほど共感する。アレクがまるで奇跡のように現れた。フォースターはうまい小説家だなと思う。2021/05/23
めめめ
8
映画を見たので原作も。読んでみると内容をほぼフルサイズで実写化しているのが分かる。クライヴと破局したあとのモーリスの苦悩が辛い。アレク(映画ではアレック)のはすっぱな口調が小気味いいものの階級の差を感じてしまう。モーリスの魂が「明るき日」に向け歩き出していく過程に胸打たれる。「ハッピーエンドにするのは必至であった。そうするのでなければわざわざ書きはしなかったろう」という著者のあとがきに崇高な作家精神を見た。2016/02/29