内容説明
一本の高速道路がバートン・ドーズの人生を狂わせた―彼の自宅と、勤める工場との上に高速道路784号線が建設されることになったのだ。移転に抵抗するドーズは、妻に逃げられ、部下を失い、酒に溺れ、自暴自棄になってゆく。さらには非合法に爆薬を入手して、工事現場を破壊、そのうえ、家中に爆薬をしかけて最後の時を持つ―。日常と紙一重の狂気を内側から描き、作者自ら、「もっとも愛着ある作品」と語る異色サイコ・サスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
102
いわゆるダメ男小説、人生の落伍者のお話。独りよがりな理屈と自分勝手な行動と自分のことを棚に上げて人を怒鳴り、または訳の分からない説教をしようとする男バート・ジョージ・ドーズ。キングは本書を「もっとも愛着のある作品」と称している。本書の時代はベトナム戦争が終わった後の1973年だ。アメリカ中にどこか鬱屈した空気が流れていた時代だろう。だからこそ戦争に負けた政府に従わない男をキングは書こうとしたのかもしれない。本書はベトナム戦争に負けたアメリカに対するキングのささやかな「最後の抵抗」だったのではないだろうか。2017/11/26
アナーキー靴下
74
『呪われた町』巻末で、本作が主流文学寄りのサイコサスペンスと書かれており興味を持つ。自宅と職場を潰し建設予定の高速道路、移転に抵抗する狂気を帯びた主人公ドーズ。あらすじや序盤からは、理不尽な仕打ちに暴走する怒りを描いた映画『フォーリング・ダウン』のような話を想像したが、読み進めるにつれ違いを感じる。ドーズにももちろん怒りはあるが、決して衝動的ではないのだ。守りたかったアイデンティティは人々との結び付きごと。長い時間をかけて醸成してきたものこそが自らを滅ぼす。切除することはできないし、したくもなかったのだ。2023/08/08
白のヒメ
51
再読。後書きを読むと「呪われた町」の後に書かれて「クージョ」の後にバックマン名義で出版されたとある。当時読んだ自分はまだ学生だったから、主人公の年齢に近い今の自分とでは、読後感は天と地ほどの差があるはずだ。共感するという事は人生経験を元にするものと想像だけでは次元が違う。ホラー要素は無い作品だけれど、狂気と正気の境を行き来する主人公の心の描写は恐ろしい。・・・もともと人間には所有している物なんて一つも無いのかもしれない。自分の肉体でさえも。後書きには読後感は明るいとあるけれど、到底私にはそう思えない。2018/01/17
夜間飛行
51
不慣れな銃を買う中年男の、不穏な心境から物語は始まる。亡き息子の思い出を守るため市の道路延長に抗ったあげく、職を失い妻にも去られたこの男への親近感はどこから来るのだろう? 悪夢を抱え込み、むしろそこに自己の存在理由を賭けていく姿は、もしかしたら今の私とどこか通じているのかもしれない。ともあれ悪夢と破滅の中間点こそキングの物語が生まれる場所だ。その隙間をヒッチハイクの娘との奇妙な一夜や、メスカリン体験、ギャングの親玉や元神父との対話で埋めていく。話作りの巧みさはキングの真骨頂で、繊細な心理描写もすばらしい。2014/08/03
ロア
14
バトルランナー的、ハイスクールパニック的な、リチャード バックマンの統一感ある作風を感じたよ(っ*’ω`с)やっぱキングは最高だなー2015/03/18