内容説明
北国の小さな漁村に伝わる物語―こま子という少女が傷ついた白い子馬に出会います。真紅のハマナスが、何度も散っては咲き、こま子は美しい娘に、子馬は雄々しい若駒に成長しました。ふたりはいつも一緒でした。ある年―海は荒れ、大波が一頭の黒馬になってこま子を海に引きずり込みます。白馬と黒馬は必死に戦かい…海は静まりましたが、その日から、白馬とこま子の姿は村から消えました。今日もまた海が荒れます―作者は、こま子と白馬の愛に永遠の命を与えることで、遠い昔を現代につなげます。すべてが機械化され、人工化される現代に愛の再生を願うからでしょうか―能を思わせる幽玄でシンボリックな展開と木版画のもつ素朴に純粋化された線と色彩が物語の愛をさらに高め、純化させているようです。