内容説明
アジアで少年時代をおくり、自身、東洋と西洋の血脈をもったル・カイン。古今東西の美術様式をたくみに融合して織りなされたイラストは、繊細にして絢爛。“イメージの魔術師”エロール・ル・カインの足跡を、豊富なイラストとともにたどります。
目次
1 華麗で繊細な世界
2 おとぎ話の語り手
3 東方へのまなざし
4 初期作品
5 深まるファンタジー
6 クリスマス
7 踊りだす絵
8 挿絵の仕事
9 ル・カイン47年の軌跡
アルバム エロール・ル・カイン
エロール・ル・カイン著作目録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
412
絵本や挿絵のイラストレーターとして私の中での2大巨星が、このエロール・ル・カインとアーサー・ラッカムである。ラッカムがいわば神話世界のエヴァンゲリストであるとするならば、一方のカインはファンタジー世界の魔導士だろう。初期の『アーサー王の剣』の青の創り出すイメージ世界からしてすでに圧倒的である。巻末にカインの12冊の絵本が並べられているが、さてNo.1はどれだろう。『いばらひめ』?然り。『アラジンと魔法のランプ』?然り。『ハーメルンの笛吹き』?これまた然り。あまりにどれもが素晴らしすぎて決められない。推薦!2020/04/14
KAZOO
128
ルカインの様々な作品からいくつかの絵をカラーのままおさめたものでファンの方にはたまらない本であると思われます。私もいくつか読んだものがありさらに読みたくなる作品もありました。さくらももこさんのまえがきにかえてという文があり最後にはルカイン讃歌ともいうべき文章が寄せられています。2020/01/12
まーくん
91
読友さん推薦。実に多彩なファンタジーの世界。グリム童話から日本の竹取物語まで。鮮やかな色彩と光の輝きに目を奪われる。一番惹きつけられたのは、やはり表紙絵にもなっている『いばらひめ』かな。夜の森の中に輝く幻想的な行列。作者エロール・ル・カインは1941年、シンガポール生まれ。日本軍の侵攻を逃れ戦時中はインドで、戦後はシンガポールに戻り少年時代を過ごす。15歳で英国に渡り、終生の活動の場とする。その生立ちからも多層的な文化の香りがする。多くの作品を残し、47歳で早逝。2020/05/24
野のこ
51
さくらももこさんのエッセイの一部が載ってて再読でしたがまたくすっとなっちゃった。エロール・ル・カインさんの美しい世界を堪能。繊細で優美な描写、輪郭を縁取ったはっきりした描写 、臨場感(映画の視点)だったり平面で装飾的だったり、西洋から東洋まで。コミカルな表情の絵もあって亡くなる少し前は愛らしく子ども向きらしい絵もありました。まさに多才!そして読みたい絵本がめっちゃ増えた♪ 2018/05/16
クリママ
47
子供が小さかった頃「美女と野獣」を読んだ。1987年3刷。エロール・ル・カインの中世的で妖しく豪華で繊細な絵に驚き、ジグソーパズルなども含め何点かを購入した。そしてまたここで、さくらももこさんが序文を書かれているなど、ル・カインに魅了されている人がいることを知り、この本を手に取れたことが嬉しい。東洋、ビアズリーの雰囲気、ファンタジー、どの絵の中にも物語がある。でもやっぱり、「いばらひめ」「おどる12人のおひめさま」「シンデレラ」が好きだ。2020/02/18