出版社内容情報
20年も家の外に出ないでくらす“なぞの女性”(詩人エミリー・ディキンソン)と少女の思いがけない出会いを美しく描き出す。
内容説明
アマーストのせの高い生け垣にかこまれた黄色い家には、20年近くも家の外に出ないでくらしている女の人がいました。見知らぬ人が声をかけると、走ってかくれてしまいます。家にお客様を招いたときでさえ、その人は見えない所にいるのです。人々は彼女のことを“なぞの女性”と呼んでいました…。この絵本は“なぞの女性”エミリー・ディキンソンと少女の思いがけない出会いの日を美しく格調高い絵で、描いています。詩人のおだやかな日常と特別な世界をちらりとわたしたちにみせてくれる、この絵本は、アメリカの偉大な、そしてよく親しまれている詩人エミリー・ディキンソンの謎とそれを包みこむ世界の喜びをよくとらえているといえるでしょう。1993年度コルデコット賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
149
「わたし、春をもってきてあげたの」扉の向こうにまっしろな冬がたたずむけれど、春はそこかしこに息をひそめていて。ほんの短い時しか咲かない脆いブルーベルは何を思ってか閉じこもる。誰も傷つけることなく自分の心のなかだけで生きていれたら。きっとそれは人が言うほど不幸じゃない。完結した無限の広がりのなか。骨はいつか土になって春をひそめたらいい。2020/04/16
♪みどりpiyopiyo♪
68
「それ、詩なの?」「いいえ、詩はあなた。これは、詩になろうとしているの」 ■雪のように白く、春のように軽やかな絵本を読みました。アメリカの偉大な、そしてよく親しまれている 19世紀の詩人 エミリー・ディキンソンと、お向かいに住む女の子との柔らかな交流を描いたお話です。春待つ喜び、ピアノの旋律、花、庭、窓辺、そして詩。■シャイだけど、心の中にユーモアと情熱を温めていた彼女に親しみを覚えます。(絵:バーバラ・クーニー。1992年。1993年度コルデコット賞受賞)(→続2018/12/10
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
64
「わたし、春をもってきてあげたの」……。女の子の家の隣、高い生け垣に囲まれた黄色い家に妹と住んでいる女性がいました。20年近くも外に出たことがなく、近所では【謎の女性】と噂されています。ある日、お隣からブルーペルの押し花が添えられた手紙が届きます。ママ宛に「ピアノを弾きに来て下さい」と。女の子はママに付き添って黄色い家を訪ねます。パパが育てていたユリの球根を持っていきました。それはかさかさで死んでいるようでしたが、「中に命が潜んでいるのだよ」とパパは話してくれたのです。1993年度コルデコット賞受賞作。2014/08/23
tulip
55
向かいの黄色い家に住む家から出て来ない女の人エミリー、とわたしの優しい交流。渡した球根から綺麗なユリの花が、エミリーの庭にもきっと咲いたことでしょう。サンルームでのパパとわたしの会話が素敵。可愛らしい家、整えられた部屋の絵が落ち着く。2020/12/04
ケロリーヌ@ベルばら同盟
55
美しい言葉と、柔らかい装画が、春を待つ心に沁み入る、素晴らしい絵本です。新しいお家に越してきた女の子は、お向かいの家の、20年来外出をせず、決して他人に姿を見せない『謎の女性』と呼ばれている、女の人に心惹かれます。雪の結晶、ピアノの音、繊細なブルーベルの押し花、パパのお話、そして女の子が運ぶ春。この世界は、美しい神秘で溢れています。名付けようもないその喜びに出会えた感謝と敬いの心。心が響き合う旋律を詩と呼ぶのでしょう。2020/03/26