出版社内容情報
ままならない天気も、家族も、人生も、
すべてを慈しみながら、わたしは生きたい。
天気の研究に生涯をささげた藤巻博士。博士一家・四世代の歴史と、彼らとの出会いで変化していく人々の生きざまや家族の在り方を丁寧に描いた傑作連作短編小説。
『ありえないほどうるさいオルゴール店』の瀧羽麻子、新たな代表作。
内容説明
ままならない天気も、家族も、人生も、すべてを慈しみながら、わたしは生きたい―。天気の研究に生涯をささげた藤巻博士。季節の楽しみを存分に味わいながら生活する博士一家と、彼らとの出会いで変化していく周りの人々を描いた連作短編小説。変わりゆく時代の中で、自分の力で変えられないものに翻弄されながらも、毎日を力強く生きる人々へ贈る物語。巻末に、藤巻博士一家が行っている「二十四節気」の楽しみ方を収録。
著者等紹介
瀧羽麻子[タキワアサコ]
1981年兵庫県生まれ。2004年京都大学卒業。07年『うさぎパン』で第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
108
天気の研究に生涯をささげた藤巻博士とその一家、そして彼らをとりまくさまざまな人たちの日々を描いた物語。二十四節気にのせて綴られる日常はさり気ない優しさに包まれていて心が和む。何かとままならないこともある毎日だけど暮らしの根っこに季節のうつろいを意識して穏やかに生きる…こういう暮らし、大事にしたいなと温かい気持ちになりました。可愛らしい装丁にもほっこり✨ 2025/02/09
ぼっちゃん
48
中学入試によく出題されつ作品として載っていてて、かわいい傘の栞が付いていたので文庫で再読。1958年から2022年までの天気を研究する藤巻博士一家を中心に描いた連作短編。藤巻博士の息子が不倫する「1999年夏至」だけ少し異質の感じがしたが、その他はそれぞれの時代に翻弄されながらどのように生きていくかが描かれていて入試問題にもなりやすいかなと感じた。藤巻一家が行っている「二十四節季」の行事も載っていたが、5月5日頃は「立夏」藤巻一家のように新茶を飲まなければ。2025/05/01
mayu
30
一九五八年の立春から二〇二二年の立春が描かれた家族の連作短編集。核となる藤巻家の気象学研究者で変わり者の藤巻教授から始まり、ひ孫の玲で終わる物語。二十四の節句を大切にして行事を繋いでいく上品さが漂う家族の雰囲気を感じたり、秋分のお隣の話に心温まっていたから夏至で起こる思わぬ展開に苦笑いしてしまった。それもこれも「あるがままを受け入れる」ということなのかな。最初の立春と最後の立春の話が一番好きだった。温暖化で乱れがちだけど季節を感じるって大事だなぁと藤巻教授のマイペースな独特さが好きだった一冊。2025/01/21
90ac
19
1958年から2022年までの時代設定。私もすでに生まれていましたので、その年に起こった出来事なども覚えています。章ごとに時代は変わっていきますので、各章の登場人物は年を取り、これはあの時のあの人かと考えながら読むことになります。家族の生活も天気現象と同じように、自由にならないもどかしさを抱えながら時を重ねていきますが、二十四節季という季節の節目を大事にして生活してきた先人の知恵は、ままならない生活にちょっと折り目を入れて生活を修正する役を果たしているのでしょうね。軽く読める作品です。2025/04/10
Y.yamabuki
19
藤巻博士一家を、時代毎に関わりの有る人物の視点で描いた連作短編集。途中、“あらら…大丈夫?”という章も有ったけれど、最初と最終章で、温かさがこの家族をふんわり包んでいるのがわかる。特に最後の2022年立春、気象にしか興味が無いように見える博士のさり気無い曾孫への気遣いや孫娘への思いが、心に沁みる。2025/02/18