出版社内容情報
行きたい場所へ行き、会いたい人に会い、生きたいように生きる。ぶれない意志をもつ写真家が1枚の写真とともに切りとる、息子のこと、写真のこと、病気のこと、旅行のこと……。新たに書き下ろしエッセイと古賀史健とのロング対談「エッセイでも写真集でもない、あたらしい本の形」を加え、人気連載を書籍化。
【本文より抜粋】
病院にいく準備をして玄関で靴をはいていると、妻と息子が応援してくれた。たけのこがのびるような感じの手の振りと変な踊りと歌で、足をバタバタさせながら「がんばれっがんばれっ」と応援してくれた。おもわず笑ってしまった。写真をたくさん撮ろうかとおもったけど、こういうものほど目に焼き付けておいたほうがいい。きっとぼくが死にそうなときにみる景色はこれだろう。(「写真には撮らない景色」より)
気仙沼でお世話になっている民宿を訪れると、お正月の挨拶のように近所の人が訪れ、みんなで会話をしたあとに海で一緒に黙祷をした。「私たちも笑顔になっちゃいけないって思ってたんだけど、そうじゃなくて明るく生きたいんだよね。」といっていた。現地を訪れないと吸えない空気感がある。いつか妻と息子を連れて行ってあげよう。(「3.11の気仙沼」より抜粋)
小学校の入学式の日は雨がしとしと降っていた。息子はすこし残念そうだった。お父さんは雨の日が好きだよといった。息子はぼくが雨好きということを耳のタコがずぶ濡れになるほど聞いている。そろそろウザったく感じているだろう。だけど息子はぼくが雨の日が好きな理由までは知らない。息子が生まれた日が雨だったから、ぼくは雨の日が好きなのだ。いまでも雨の日に一人で車を運転していると、息子が生まれた日のことを思い出す。
(「息子が生まれた日から、雨の日が好きになった」より抜粋)
【目次抜粋】
・治療のこと
・写真には撮らない景色
・お寿司屋さんへ
・料理はおもしろい
・大人にならなければ気づかなかった
・チョココロネをわけあって
・お年玉でお金の教育
・3.11の気仙沼
・外出自粛の週末
・あたらしい日常を生きる
・ヘタだけどいい写真を撮ろう
・雪の山で撮影していた
・息子が生まれた日から、雨の日が好きになった
ほか、全51本
内容説明
息子、病気、写真、旅行…写真家が1枚の写真とともに綴る、ありのままの日常。古賀史健とのロング対談「エッセイでも写真集でもない、あたらしい本のかたち」収録。
目次
冬の深夜に思うこと
酉の市の焼きそば屋さん
小説と安楽死について
ワクワクする買い物
お年玉でお金の教育
治療のこと
旅の線
香典返しにしたいくらいの
ホテルの価格とクオリティー
17歳と37歳
新型コロナウイルス
悟飯とピッコロ
外出自粛の週末
あたらしい日常を生きる
息子の質問にこたえる
料理がはかどっている
チョココロネをわけあって
スタバのソーシャルディスタンス
児童憲章
顔は覚えているけれど〔ほか〕
著者等紹介
幡野広志[ハタノヒロシ]
1983年、東京生まれ。写真家。2004年、日本写真芸術専門学校をあっさり中退。2010年から広告写真家に師事。2011年、独立し結婚する。2016年に長男が誕生。2017年、多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。近年では、ワークショップ「いい写真は誰でも撮れる」、ラジオ「写真家のひとりごと」(stand.fm)など、写真についての誤解を解き、写真のハードルを下げるための活動も精力的に実施している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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