出版社内容情報
一木 けい[イチキケイ]
著・文・その他
内容説明
高校二年生の橙子はある日クラスメイトのヤマオからの推薦で、合唱コンクールのソロパートを任されることに。当初は反発したものの、練習を進めるにつれ周囲とも次第に打ち解けていく。友人たちは、橙子が時折口走る不思議な言い訳や理解のできない行動に首をかしげていたが、ある事件をきっかけに橙子の抱えていた秘密を知ることになり―。若く力強い魂を描き出した、胸がひりひりするような感動作。
著者等紹介
一木けい[イチキケイ]
1979年福岡県生まれ。東京都立大学卒。2016年「西国疾走少女」で第15回「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。同作を収録した『1ミリの後悔もない、はずがない』が業界内外から絶賛され、華々しいデビューを飾る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
りゅう☆
78
合唱コンクールでヤマオがアルトソロに橙子を推薦した。ピアノ担当涼、指揮者青木さんの4人がメイン。橙子の我が儘、ヤル気なさにイライラ。橙子と関わりを持ちたくない涼だが父親が亡くなった時、助けてくれたのが橙子の母芳子さん。なぜこんないい母親がいて橙子ったら…。青木さんもヤマオも橙子をあきらめない。だんだん心開く橙子だが、親に内緒にしてほしいと言う。出生の秘密、橙子が抱える心の闇に直面した時、戦慄が走った。子育ての大変さに共感するも、愛を知らない子供の心もとなさが切ない。願わくば4人がずっと友達でいますように。2022/06/21
アッシュ姉
76
またもや一木さんの小説に打ちのめされた(褒め言葉)。私はなにも分かっていなかった、なにも見えていなかった。読み終わるともう一度読み返したくなる。愛を知らない子供と母親。愛し愛されたかっただけなのに、捻れてしまった思いはなかなかほどけない。悲しみと切なさのなかにわずかな光が感じられてよかった。語り尽くされていない余白が余韻にもなっているが、もう少し知りたいと思った。2022/11/16
ナミのママ@低飛行中⤵️
64
多くの読友さんが感想をあげていた本作が文庫化された。タイトルは意味深、問題児の高校生が主人公なら、また虐待の話か?と思いつつ、ポプラ社から出ているのも気になる。さらっと数時間で読めてしまうがなかなか考えさせられるストーリーだった。清々しい青春小説のようでありながら、不可思議なところがある。何かがある、それはなんだろう?…これから先、どうなっていくのかは考えない方が良いんだろうな、この主人公。2021/09/19
ポロン
39
橙子はクラスメイトのヤマオからの推薦で、合唱コンクールのソロパートを任される。青木や涼、志穂との触れ合いが彼女を羽撃かせる。どんなに親しくても踏み入れられたくない領域がある。人間は、多面的だが人受けの良い顔を表面に出して、生き抜くことが大人とされる。生を享けて子供を育てていく事は、覚悟を伴う。自分が納得した子育てと、外から見た成果は乖離するのは当然。また、その逆も然り。親子がお互いを必要とした期間は気がつくまでに霧散している刹那。ただ、ひたすらに愛するものを見守り、その幸せを願うことだけを求められる寂寥。2024/03/24
よっち
35
ヤマオの推薦で合唱コンクールのソロパートを任された高校二年生の橙子。親戚でクラスメイトの涼の視点から彼女の苦悩と決意が描かれる青春小説。気難しくて周囲から浮いていた橙子に期待するヤマオ、一緒に練習することになった伴奏役の涼と委員長で指揮者の青木、共に過ごす中で意外な一面を見せてゆく橙子が抱える苦悩。これまで見えていたものがガラリと反転した世界で、どうにもならないところまで拗れてしまった関係があって、やりきって勝ち取った結果にはぐっと来ましたが、だからこそその先にあったこの物語の結末が胸に突き刺さりました。2021/09/07




