出版社内容情報
小川 紗良[オガワサラ]
著・文・その他
内容説明
児童養護施設「星の子の家」で暮らす花は、18歳の夏を迎えたが、将来への夢や希望を何ひとつ持てていない。ある日、「星の子の家」にまた一人、事情を抱えた女の子・晴海がやってくる。ボロボロになったぬいぐるみを必死に抱きかかえている晴海の姿に、花はかつての自分を重ねていた…。みずみずしい連作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
machi☺︎︎゛
143
俳優でもあり監督でもある小川紗良さん。彼女の事は知らなかったけど、この本は心温まるほっとできる本だった。施設で育つ花は18歳になり今年施設を出る事になっている。そんな時新しく連れてこられた晴海に幼い頃の自分を重ねる。施設で育つ子達の連作短編集。中には愛情を求める子達の苦しい叫びに胸が苦しくなった話もあったけど、施設長や他の子達の温かい気持ちに救われた。2021/09/08
美紀ちゃん
81
事情を抱えている子供が暮らす星の子の家。 親が病気になってしまった子、経済的な問題で家庭で暮らせなくなった子、身体や精神に深い傷を負った子。 花のお母さんが夏祭りで起こした事件は衝撃的だった。 小さい子を守りたいという願いをサンタさんは叶えてくれるといいなと思った。2021/08/20
有
59
主人公花が児童養護施設「星の子の家」で暮らす最後の1年、自身の心の穴とどう付き合っていくかを描いた連作短編集。4篇それぞれ彼女の視点から、施設で暮らす子ども一人一人に焦点を当て心の穴と向き合う。季節や有名な童話の使い方が巧みで、丁寧な描写により臨場感が増す。読んでいる間中、自分の中にもある心の穴をいつもより濃く感じていた。安易な救いは無い。心の穴を塞ぐ方法も無い。ただただ、心の穴はそのままに、自分の人生を投げることなく日々を重ねていくだけだ。読後著者が何者なのか調べた人は多いだろう。私もその中のひとり。2021/08/30
ぶんこ
46
児童養護施設で生活する子どもたちを、18歳の花の目線で描かれています。母がおこした事件で、8歳の時に「星の子の家」に来た花。18歳になって施設を巣立つ時が近づいている1年間の日々。ここの施設長がタカ兄だということが、ここの子どもたちには幸いと思う。常に子どもたちのことを気遣っていて、読んでいて暗くならないのはタカ兄のおかげ。花が面倒を見ていた金魚を海に放す、しかも表題となっている意味を考えましたが、どうしてもわかりませんでした。悪い方には考えたくないという気持ちが邪魔しているのか。タカ兄、見守ってあげて。2022/02/25
じょんじょん
44
実力派若手俳優小川紗良さん。彼女の初監督映画作品『海辺の金魚』を自身でノベライズした作品。若いのに役者で映画監督で、さらに文章も、とは本当にすごい。児童養護施設「星の子の家」に暮らす18歳の花、施設の子たち、施設員とのエピソード4篇。犯罪者の親や自分を遺棄した親をもつ子たちは精神的マイノリティ感と自分の存在価値を疑ってしまう。そんな環境で施設卒業間近の18歳の主人公の気づきと成長が描かれます。表題作は少し観念的な表現が多い印象です。他3篇はとてもしっくりしんみりしました。川島小鳥さんの表紙写真も素敵です。2021/09/07