出版社内容情報
水野 梓[ミズノアズサ]
著・文・その他
内容説明
「私は事件には一切関係していません。真犯人は、別にいます」そう言い残して絞首台を登っていった男。時はめぐり、小学生が学校の屋上から落ちて亡くなるという事故が発生する。いじめによる自殺を疑って取材を進めていたテレビ局社会部の女性記者は、少年の母親が、冤罪が疑われる事件の加害者として極刑となった男の娘だと知る。果たして二つの事件と事故に関連はあるのか!?警察権力との暗闘の果てに、女性記者がたどりついた驚愕の真実とは…。
著者等紹介
水野梓[ミズノアズサ]
東京都出身。報道記者。早稲田大学第一文学部・オレゴン大学ジャーナリズム学部卒業。警視庁や皇室、原子力などを取材、社会部デスクを経て、中国総局特派員、国際部デスク。ドキュメンタリー番組のディレクター・プロデューサー、新聞社で医療、社会保障、教育分野の編集委員、夕方のニュース番組のデスク。現在、経済部デスクとして財務省や内閣府を中心に取材しながら、報道番組のキャスターを務める。『蝶の眠る場所』が初の著書となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
221
ずしりと重たい内容に多くの何故?と見逃すな!が、私の脳を刺激して、痛ましい事件の背景が浮かぶ都度苦しくなる読書時間だった。日曜日の小学校の屋上から転落死した男子児童・大河は冤罪で死刑になった男性・今井武虎の孫だった‥何故児童が転落死したのかを調べるTV局記者・美貴はその冤罪事件を再調査する事になるのだが、私怨が絡む冤罪への過程が余りにも杜撰で怖ろしい。果して加害者家族の苦痛と連鎖が痛いほど切ない。真犯人は誰?真実はどこに?見事に大河の事件まで明らかになる顛末は天晴れと言うしかない。2021/07/01
utinopoti27
192
転落死した少年は事件か自殺か?テレビ局の社会部に務める榊美貴は、事件取材を進めるにつれ、母子殺害の罪で冤罪を叫びながら、死刑が執行された男との繋がりに突き当たる。取材を重ねるにつれ、事件は様々な関係者の苦悩をあぶり出しながら、混迷の泥沼にヒロインを引きずり込んでゆく・・。【冤罪】をメインテーマにする本作、重い課題を突きつける一方で、ドキュメンタリー番組の制作過程など、個々のディティールに驚くほどのこだわりが読み取れる。多彩なモチーフをそつなくまとめきっており、読みごたえも十分。驚異の新人が現れた。2022/01/30
nobby
180
序章で描かれる少年の転落死、それは単なる事故かイジメによる自殺か…もう存分に重い始まりにとどまらず、本編では冤罪、加害者家族への残酷かつ悲惨な境遇が生々しく語られる…それを追うテレビ局女性記者の献身的で前向きな態度に救いをみる。モヤモヤ違和感ばかりの「何か別の意志のようなもの」、決して許されざる謀略が予想した巨悪ではなくて小さな憤りに起因していたのは意外だった。憎悪から生じた、贖罪から波及した、病的に繰り返された、恐怖からの逃避が導いた罪の連鎖は止まらない…愛されるべき存在「大河」の名前の由来がせつない…2022/03/19
おしゃべりメガネ
172
いや〜、面白かった。とにかく夢中になって読んじゃいました。最初から最後まで、ほぼノンストップで。ここ数年、ミステリーはちょっと敬遠気味ですが、本作は過去これまでに読んだあらゆるミステリー作品にも全くひけをとらない素晴らしい仕上がりです。大体、この手の作品は読んでたら犯人等、わからなくもないのですが、本作は結構いい意味でわかりにくく、終盤までだれるコトなく飽きずに楽しめました。特に終盤の淡々と真実に迫っていく流れは、もうとにかく見事としか言いようがありません。また気になる作家さんが一人、登場してくれました。2021/08/14
モルク
164
19年前幼女とその母を殺したとされる死刑囚。無実を訴え「罰は受け入れるが真犯人は別にいる」との言葉を残し刑が執行された。小学校の屋上から飛び降りた少年。少年と死刑囚の繋がりを調べるテレビの報道記者美貴は、事件は冤罪だった可能性があることを見出だす。キャリア警察署長、うすわらいを浮かべる少年…意外な人との繋がりが事件の真相に迫る。死刑制度、冤罪、いじめ、偏見…重いテーマが次々と表れ読みごたえあり、テンポある文体と次第に明らかとなる内容に目が離せない。これがデビュー作、今後のが楽しみな作家さんの登場である。2022/05/05