出版社内容情報
解散するオーケストラの怒り、異様な演目の最終公演。一人の男の殺人をめぐる、痛快で痛烈な傑作。
内容説明
あの男には、この町の音楽を抹殺しようとした罰があたったのだ…。最後に明かされる狂気に、背筋がぞわりと震え出す。笑みがもれるほど小気味よい、新感覚の音楽ミステリ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やま
117
綾峰音楽堂殺人事件 2019.06発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。 物語は、古い綾峰音楽堂の建て替えと、それに伴って起きる地方オ―ケストラ・綾峰フィルの解散問題の渦中でおきた殺人事件です。 最初読んでいて、これはサスペンスなのかなと疑問を持ちました。それぐらい、地方オ―ケストラの現状を詳しく書いた本です。 この本は、字が小さくて読むのを何回か中止しょうと思いましたが、最後まで丁寧に読めて良かったです。読むのには3日かかりました。 藤谷治さんの本を読むのは初めてです。2019/10/05
yukision
47
財政難の地方都市で音楽堂やオーケストラの廃止を先導していたDJが殺される。探偵役の大学教授の活躍を友人の作家目線で語られるところはホームズっぽい。犯人捜しというより、その事件の背景が怖い。2020/02/06
kei302
45
地方の一都市にプロオケは必要なのか?図書館との対比にナルホド。「図書館は儲からない。けれど存在価値があると、多くの人から認められている。綾峰フィルだって、音楽に関心のない、5秒で寝てしまう人のためにも演奏しているんです。人生のいつかどこかで、図書館を利用することになるかもしれない。ふっと思い立って、クラシック音楽を聴いてみる気になるかもしれない」随所に現れる藤谷的皮肉が興味深かった。討木には再登板してもらいたい。 2019/09/18
雪紫
32
取り壊しが決まった音楽堂で解散決定の地方オーケストラが最終公演を迎えるなか事件は起こった。殺人事件とタイトルにあるものの、ミステリと言うより事件に至るまでの経緯ーー地方オケや擁する地方都市の苦しい現状や扇動の恐ろしさを書いた小説(ついつい「ゼロ時間へ」を思い出す)。とりあえず自分の活躍を本に頼んで大丈夫か自称人間嫌いのお節介な探偵役(笑)と思いながら、記録者のツッコミを含み笑いしながら読んでたら、ラストにゾッとくるものが・・・。図書館と地方オケとの対比の発言が印象的。2019/11/14
mayumi
29
助成金が廃止され、解散せざるをえなくなった地方オーケストラの最終公演で一人の男が殺される。殺された男は、オーケストラを解散に追いやったラジオ局のDJだった…というストーリー。ハイドンの交響曲「告別」は、最後に演奏者が一人一人減っていく、という面白い手法が取られている楽曲。この楽曲が、最後の最後で事件の真相に近づく手がかりとなる。もちろん、それは探偵役・討木の憶測ではあるけれど、なんとなく「オリエント急行殺人事件」を思い起こさせるものだった。なんとも言えない余韻が残った。2020/04/25