出版社内容情報
『きみはいい子』と同じ町を舞台に、家族問題に加えて医療現場の問題にも切り込んだ一冊。絶望の先にある希望を描き出す感動の作品。
内容説明
施設で育ち、今は准看護師として働く弥生は、問題がある医師にも異議は唱えない。なぜならやっと得た居場所を失いたくないから。その病院に新しい師長がやってきて―。『きみはいい子』と同じ町を舞台に紡がれる、明日にたしかな光を感じる物語。
著者等紹介
中脇初枝[ナカワキハツエ]
1974年徳島県生まれ、高知県育ち。高知県立中村高等学校在学中に小説『魚のように』で第二回坊ちゃん文学賞を受賞してデビュー。『きみはいい子』で第28回坪田譲治文学賞を受賞、第1回静岡書店大賞第1位、2013年本屋大賞第4位となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
198
人はそれぞれに悩みの中に生きています。幸せしか知らない人生を送る人などいません。しかし、自分を偽って生きる人生はどこまでも後ろ向きであり自分自身も満足のいく人生にはなりえないと思います。そんな中で気づきをきっかけに『今はなんにもこわくない』と、自らがなすべき道を見据え、力強く一歩を踏み出す弥生の物語は、弥生の真の誕生をそこに見るものでした。「わたしをみつけて」という書名が、読み進めれば進めるほどに心の中に浮かび上がるのを強く感じるこの作品。中脇初枝さんのどこまでも優しい眼差しを感じた素晴らしい作品でした。2022/01/31
新地学@児童書病発動中
141
子供の時に捨てられて、今は准看護師として働いている弥生の生き方を描く小説。暗く、重たい内容で読み切るには覚悟が必要だと思う。特に傲慢な院長の手術時の医療ミスによる死には背筋が寒くなった。暗い面ばかりではなく、新しい師長と出会うことで、弥生が看護師として成長していくところは、読む人の胸を打つ。緊迫感のある最後の場面が素晴らしく、弥生の純粋な祈りに涙が出た。2016/06/17
汐
77
「きみはいい子」から繋がったお話。いい子という言葉に縛られ、常にそういなければならないと善人を演じる主人公。角が立たないように、いつまでもその場所に立っていられるように、いつも笑っているふり。日常でも、そういう態度をしなければならない時はあります。でも、自分をまだしてまでしがみつく価値がある場所なのかなと疑問に思うこともあります。自分のことを思ってくれる人に出会った主人公が、自分のすべきことを見つけ、いい子でも悪い子でもない、有りの侭の自分を見つけられた。雲の隙間から光の差し込むようなラストでした。2017/03/08
dr2006
75
親に捨てられた主人公の弥生は施設で育ち、努力して准看護士になった。捨てられた理由は自分が悪い子だったからだと信じる彼女は、今の社会ステイタスや職場のヒエラルキを守るには、生い立ちを隠し深い人間関係をせず、自意識を押し殺し、まわりから良い人と思われ続けなければならないと考えている。本当は他人に寄り添わないドス黒い考えを持っているのに、優秀で良い人を演じきろうとしている。だが、良い人を演じ続けた弥生は逆に他人から求められる本当の人格者になった。横柄な医師と看護師の摩擦を通して描く、私を見つける物語。良かった。2016/07/28
みっこ
73
【月イチ再読】この作品本当に好きです。購入しようかな。赤ちゃんの時に親に捨てられ、施設で育った弥生。人の顔色を伺い、いい子でいなければと自分を殺して生きてきた。そんな弥生が師長と菊池さん、2人の素敵な大人に出会って変わっていきます。この2人の生き方がとても素敵で。こんな人になりたいと心から思う。『あなたは自分で自分を育てたのね』という師長も優しいし、『一人で大きくなったわけではない』と気づく弥生はとても強い。最後のシーンでは涙が出ました。私は三月に捨てられた。そして三月に拾われた。ここで絶対泣いてしまう。2018/03/14