出版社内容情報
どら焼き店の求人をみてやってきた徳江という高齢の女性。彼女が「あん」づくりに託した人生とは? 深い余韻が残る現代の名作。
内容説明
町の小さなどら焼き店に働き口を求めてやってきたのは、徳江という名の高齢の女性だった。徳江のつくる「あん」は評判になり、店は繁盛するのだが…。壮絶な人生を経てきた徳江が、未来ある者たちに伝えようとした「生きる意味」とはなにか。深い余韻が残る、現代の名作。
著者等紹介
ドリアン助川[ドリアンスケガワ]
1962年、東京都生まれ。詩人・作家・道化師。早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。放送作家等を経て、1990年「叫ぶ詩人の会」を結成、話題に。1995年から2000年までラジオ深夜放送のパーソナリティーを務め伝説的な人気を博す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
540
もともとは小説家になりたかった千太郎と、国語の先生になりたかった徳江。だが、人生はままならない。ともに「人生のある時期、自由を奪われ塀の中で生きた」経験を持つ二人だからこそ、言葉で話さなくても通じ合う気持ちがあった。いろんな差別や疎外感…孤独と向き合いながら、その場所で確かに生きている人間ドラマ。ドリアン小説の傑作だった。2019/12/14
小梅
445
まず文章が読みやすいですね。私が20歳の年に父の勤める会社の社宅から東村山市の建売住宅の一戸建てに引っ越しました。「全生園前」バス停からすぐの場所です。正門から一番奥、反対側の位置にハンセン病資料館があります。まさにこの作品の舞台です。ハンセン病について薬剤師の従兄弟(母の兄の子)に問い合わせ、この時点で進行も感染もしない病気である事を知り購入を決めたのです。実際にらい予防法がか無くなっても戸籍から抹消されてて帰る家が無いとの話しを聞いてました。この作品の最後、強制的な断種…もう号泣でした。2015/07/24
nobby
350
映画予告から気になっていた作品。さえない中年男が売るどら焼き、そこに一人の老婆が“あん”に手を加えて評判が一転も、哀しいかなもう一つの事実によってその喜びは長く続かない…その要因として描かれるハンセン病、ここにもまた人の無知や勝手な思い込み・偏見といった怖さが表れる。こうあるべきと思う意識と実際に関わっての感じ方の違い、福祉を仕事とする自分も戸惑うことも多々ある。ラストの手紙で徳江さんが説く「生きる意味はあった」に涙こぼしながらも優しくホッとする読後感。2016/05/03
mapion
346
老婆は自ら格安の時給でどら焼屋に雇われ、めっぽう美味しい小豆餡を作ります。その丁寧な仕事が気持ち良い。指が曲がり、左右の目の大きさが違ったりする老婆の容姿に、店長は疑問を持ちます。そこから一転してハンセン病の話に。老婆は昔ハンセン病の患者で療養所に隔離され、世間から隔絶された小さなコミュニティーの中で暮らしていた。病気が治っても『らい予防法』があり療養所から出ることはできない。1996年にらい予防法が廃止されたあとも、世間は彼女らを受け入れない。老婆はどんな思いでどら焼き屋で働いたのでしょう。2025/12/21
ハイランド
346
私事になります。生まれ育った家は、療養所から5キロほど離れた処にあり、母がそこに勤めていたこともあり、子供の頃はよく遊びに行ったり、収容されていた患者の方が庭の手入れに自宅に来たりと、鼻が崩れていたり指が変形したりしていましたが、身近な存在でした。しかしいかんせん子供のこと、その哀しみまで感じることは出来ませんでした。ある日宣告されたが最後、家族からも離れ、外界からも切り離され、職業の自由や住居選択の自由も全て奪われ、一生を園の中で生活することを強いられた人達がいることを想像してください。50年も前の事。2016/05/14
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