百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 181p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121764
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

復員後、焼け跡の東京で殺人犯となった戦友は、天城の稜線に姿を消した。元刑事の訪問を機に、「私」は旧友の足どりを追い始めるが…。謎めいた精神の軌跡を描いた田村泰次郎の『男鹿』。大げさな自漫話から、うっかり上客を迎えることになった男の、滑稽な身の処し方(ゴーゴリ『幌馬車』)。豪雨の夜、祝宴が繰りひろげられる家に、招かれざる客が一人、また一人とまぎれこむ。牧羊地の闇にひそむ恐るべき事件(ハーディ『三人の見知らぬ客』)。逃亡者たちが放つ、鮮やかな一瞬の物語。

著者等紹介

田村泰次郎[タムラタイジロウ]
1911‐1983。三重県生まれ。早稲田大学在学中から執筆活動を開始し、戦争中は兵士として中国各地を転戦。『肉体の悪魔』や『肉体の門』など、男女の肉体を通じて魂に迫った作品を発表し、肉体派作家と呼ばれた

ゴーゴリ[ゴーゴリ][Gogol,Nikolai]
1809‐1852。ウクライナ生まれのロシアの小説家・劇作家。民話を取り入れた短篇集で文名を高め、ペテルブルクを舞台にした『ネフスキー大通り』『狂人日記』などが人気を博した

ハーディ[ハーディ][Hardy,Thomas]
1840‐1828。イギリスの小説家・詩人。南イングランド出身。建築家助手を経て作家になり、1874年『狂乱の群れを離れて』で地位を確立。ウェセックス地方を舞台とする作品を多く書き、晩年は詩作に専念した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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モモ

47
田村泰次郎『男鹿』戦争で同じ部隊だった大木戸が人を殺して逃げたのち鹿になったと聞き、その現場へ赴く私。京都の大学から学徒出陣した大木戸は幹部候補生だったが胸をやられ一兵士となる。そして親友だった上官に殺人を命じられ、やりとげたのち大木戸は変わってしまった。ニコライ・ゴーゴリ『幌馬車』おおげさに自慢した男の少し笑える結末。トーマス・ハーディ『三人の見知らぬ客』イングランド南部の丘陵地にある羊飼いの家で娘の命名式が行われ大勢の来客があるなか、見知らぬ3人が現れて…。3人の正体に驚く。確かにどれも「逃」でした。2022/07/25

臨床心理士 いるかくん

43
「逃げる」がテーマの3人の作家の3篇の作品から成るアンソロジー。バラエティに富んだ3篇。戦友が殺人を犯し逃亡し、雌鹿とともに恋人のように山の稜線で見かけたという元刑事の話を聞き、戦友の足取りを追う「男鹿」が特に好み。2014/12/23

TSUBASA

19
「鹿になって牝鹿とともに天城の稜線に消えていった」という戦友は果たしてどこへ行ったのか、田村泰次郎『男鹿』。酒を飲んで陽気になって、自らが買った馬車を将軍や他の将校に自慢するため午餐に招くチェルトクーツキイ。しかも酔ったせいで午餐の準備もできなかった彼の末路は、ゴーゴリ『幌馬車』。子供が産まれたお祝いをしている羊飼いの家に妙な客が立て続けに現れる。客たちの驚きの正体、ハーディ『三人の見知らぬ客』収録。徐々に真相が見えてきながらも、あっと結末でひっくり返されるハーディが面白かった。2016/07/02

17
田村泰次郎「男鹿」ゴーゴリ「幌馬車」ハーディ「三人の見知らぬ客」の3編。男鹿が抜群によかった。学徒出陣して戦場で無抵抗な天然痘患者を殺し、復員して、都会で人を殺した男が牝鹿と共に山に消えるまで。戦争で人生変えられちゃった人がここにも。インテリで戦場で幹部候補生になるはずが病で断たれ、戦場では無能の烙印を押され、人ならぬものにというあたりが山月記を思い起こさせる切なさ。2022/06/19

マッキー

15
田村泰次郎の「男鹿」、どことなく山月記のような趣がある。2018/04/03

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