百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 153p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121733
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

「貧しい、親きょうだいのために働き通した一生が此処に睡っている」―ある芸妓の葬儀に参列するため、逕子は久々に故郷の土を踏んだ(若杉鳥子『帰郷』)。三十三で死ぬと考えることで命の尊さを分かった気になっていたお葉。だが、年老いた母が浴場で呟いた一言に、生の本当の意味を感じとる(素木しづ『三十三の死』)。一時は死による逃避を考えた「私」が、復興途上の広島に見出した平和への希望と祈り(大田洋子『残醜点々』)。過去も現実もしなやかに受けとめ、自ら明日を紡ぎだしてきた女性たちの軌跡。

著者等紹介

若杉鳥子[ワカスギトリコ]
1892‐1937。東京・下谷生まれ。生後まもなく茨城の芸妓置屋の養女に。横瀬夜雨の指導を受けて歌人として活動し、その後、プロレタリア作家として評価された

素木しづ[シラキシズ]
1895‐1918。北海道札幌生まれ。本名・志づ。17歳のとき右足を切断した後、作家を志して森田草平に師事する。新進作家として期待を集めたが、肺結核のため22歳の若さで他界した

大田洋子[オオタヨウコ]
1903‐1963。広島市生まれ。本名・初子。1940年、懸賞小説に『桜の国』が入選。東京で作家活動を行っていたが、疎開先の広島で被爆。その惨状を『屍の街』に記録した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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モモ

49
若杉鳥子『帰郷』芸者置屋の養女となった鳥子の自伝的話。家業を嫌っていた鳥子。家族のために生きた小巻の葬式のため帰郷した際の懐かしさと嫌悪が交じり合った思い。素木しづ『三十三の死』自伝。17歳で足を失ってからの思いが綴られる。足を失ったことで心の感覚が鋭くなったような文章にひかれる。三十三よりも、もっと早い二十二での死が切ない。大田洋子『残醜点々』広島で被爆した洋子の自伝的話。結婚した相手に既に妻子がいたとは。その後、男性の本妻の妹、男性の息子と仲良くなる様子に驚かされる。被爆の話もあり、忘れられない一話。2022/11/03

臨床心理士 いるかくん

37
3人の作家の3篇の作品から成るアンソロジー。女。様々な生き様、あるいは死に様。2014/12/20

あじ

33
“三十三になったら死のう”十八で片足を失ったお葉は、終止符の日を恍惚として待ちわびる。自分に向かう同情、憐れみ、蔑みに押し潰されながら、その境遇に甘えていたことを知る。母の想いがお葉を突き動かす、素木しづ「三十三の死」が【紅】の巻の根雪に。2020/02/06

TSUBASA

27
料理屋の妓として貰われて来た逕子はある時家出する。彼女の葬式に久方ぶりに帰郷し、昔を偲ぶ。若杉鳥子『帰郷』。三十三歳で死ぬことを決めたお葉の心変わり。素木しづ『三十三の死』。H市が原爆の紅蓮の炎に灼かれてから6年。復興と平和に向けて祈りの短冊をしたためる。大田洋子『残醜点々』。実際に原爆の被害を受けたという大田洋子の作品がやはり印象的。看護婦が死屍累々とした病院で死に行く者たちに水を与えた時に出た「いやだっ」という叫びは紛れもない実話なのだろう。その叫びを、後世の者は二度と実現してはならないのだ。2016/03/21

22
若杉鳥子『帰郷』素木しづ『三十三の死』大田洋子『残醜点々』という女性作家の私小説3編。戦後5年経った広島を舞台にした残醜点々がやっぱり生々しく重い。病院の廊下いっぱいに並んだ背中には「死体」と書いた紙が貼られ、男のきちがいがその上を飛び石のように飛んで歩いた。敗戦の後、日本の颱風は外国の女の名前でやってきて、毎年各地を荒らした。「戦争反対」「平和」と並んで、おそらく原民喜であろう自殺した詩人の句が踊る七夕の短冊。2021/11/07

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