百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 139p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121542
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

「おうい、フィービー!ほんとに帰ってきてくれたのかい?」。亡き妻の幻を追い求め、必死に彷徨う老農夫の痛ましくも幸福な生涯(ドライザー『亡き妻フィービー』)。その不思議な言動で、人々の笑い者だった青年。憂いを帯びた眼差しが見ていたのは(ノディエ『青靴下のジャン=フランソワ』)。あの花にはあらゆる悪が集まっている、だから毟り取ってしまわねば―。閉ざされた病棟で世界を救おうとした男の誇り高き闘い(ガルシン『紅い花』)。それを狂気というのか。真実の高みを求める、汚れなき魂を描いた三篇。

著者等紹介

ドライサー[ドライサー][Dreiser,Theodore]
1871‐1945。アメリカの作家、インディアナ州生まれ。16歳で単身シカゴへ出、職を転々とした後、新聞記者に。1925年の小説『アメリカの悲劇』が高い評価を得た。『シスター・キャリー』『とりで』など小説のほか、評論、エッセイ、戯曲を発表

ノディエ[ノディエ][Nodier,Charles]
1780‐1844。フランス生まれの詩人、小説家。革命狂乱のなか波瀾の青春時代を送り、帝政崩壊後は図書館司書の傍ら、ロマン主義を牽引。フランス幻想文学の祖と仰がれた。1833年、アカデミー・フランセーズに選出

ガルシン[ガルシン][Garshin,Vsevolod]
1855‐1888。南ロシア(現在のウクライナ領)に生まれる。1877年露土戦争に出征、戦場体験を描いた『四日間』で文壇的地位を確立した。中学時代から精神疾患の発作に苦しみ、33歳の若さで自ら命を絶つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あじ

47
ここではないどこかを見ている、浮世離れした人たちの死。不幸な顛末の裏に偲ぶ“幸福な死”の引き波を、時代も国も違う三人の作家が書き遺した名品短編。2018/04/08

モモ

44
ドライサー『亡き妻フィービー』妻が亡くなり、一人になったヘンリー。次第に妻の姿を探しまわるようになる。そしてむかえる結末。夫婦の愛が深い。ノデイエ『青靴下のジャン=フランソワ』皆が憧れる才色兼備のジャンが正気を失う。人とは違う何かを見つめる彼。マリー・アントワネットの処刑や愛する人の処刑を離れた地で”視た”ジャン。狂人というよりも聖人のように感じる。ガルシン『紅い花』精神病院に入院した男は、紅い罌粟の花を悪の権化と思い、一人戦う。入院経験のあるガルシン自身を感じる。想像を超えた人間の生きざまを感じた一冊。2023/01/08

臨床心理士 いるかくん

34
3篇から成るアンソロジー。バラエティに富んだ作品集だが、個人的にはドライサーの「亡き妻フィービー」が好み。2014/03/19

神太郎

25
崖というのはなんと象徴的なテーマか。あらすじ読めば「狂」なんだけども、読めばわかる、正常とそこから外れてしまった狂気の世界と。本巻、その象徴的なものがドライサーの作品だと思う。どの作品も一歩外れてしまった人たちの物語でありその終わりはどれも悲劇的であるはずなのに、当人はどこかやりきっている部分がある。それがまたこの作品に奇妙な趣を与えているのだ。あらすじと内容を読んでからの印象がこうも違うとは!良い意味で裏切られた!2020/03/06

TSUBASA

19
仲睦まじく暮らしていた老夫婦。しかし妻が他界し、悲しみのあまり夫は気がふれてしまう、ドライサー『亡き妻フィービー』。学問のし過ぎで狂ってしまったという青年がした予言。幻想文学の祖が語った奇妙な現実の事件、ノディエ『青靴下のジャン=フランソワ』。癲狂院に入ってきた「例の患者」は真っ赤な罌粟に異常な執心を見せる、ガルシン『紅い花』収録。何故か三作とも狂気がテーマだった。ドライサーが非常に良かった。何のことはない、妻を失って狂った爺さんの放浪を描くだけなのだけど、爺さんの妻に対する愛が溢れてて本当に哀しくなる。2014/12/18

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