内容説明
養子として迎え入れた少年は、やがて妻の命を奪い、自らの人生を破壊するおそるべき存在となった。悪意の連鎖を描いた物語（クライスト『拾い子』）。刑の執行を前に、死刑囚にある試みを依頼した医者。科学への無軌道な信奉がもたらした悲劇とは（リラダン『断頭台の秘密』）。世にも妙なる歌声を牢獄に響かせるのは、有罪確実の凶悪殺人犯。声に魅せられた人々が勝ちとった男の無実と、その代償（フーフ『歌手』）。偽善と欲望のうずまく生と、究極の終焉に直面した者たちのドラマ。
著者等紹介
クライスト［クライスト］［Ｋｌｅｉｓｔ，Ｈｅｉｎｒｉｃｈ ｖｏｎ］
１７７７‐１８１１。ドイツの小説家、劇作家、ジャーナリスト。軍人を志したのち哲学に転じたが、カントに衝撃を受けて挫折。小説や戯曲がなかなか認められず、３４歳でピストル自殺を遂げた
リラダン［リラダン］［Ｌ’Ｉｓｌｅ‐Ａｄａｍ，Ｖｉｌｌｉｅｒｓ ｄｅ］
１８３８‐１８８９。フランスの詩人、作家。貧困の生涯を送りながらも、名門貴族らしい誇り高さで独自の理想主義の文学を築き上げ、フランス象徴主義に影響を与えた
フーフ［フーフ］［Ｈｕｃｈ，Ｒｉｃａｒｄａ］
１８６４‐１９４７。ドイツの小説家、歴史家。長篇『ルードルフ・ウルスロイの回想』や評論『ロマン主義の開花期』などで、新ロマン派を代表する作家に。歴史研究でも多くの業績を残し、女性初のゲーテ賞受賞者となった（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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モモ
47
ハインリヒ・フォン・クライスト『拾い子』伝染病で両親を失った幼いニコロを養子に迎えるも…。成長したのち、女好きなニコロは一家を破滅に追い込む。破滅へ突き進む様子はさながら映画のよう。クライストは存命中認められなかったそうだが、もっとクライストの作品を読んでみたい。リラダン『断頭台の秘密』首を切り落としたばかりの頭部の様子を知りたい医師は死刑囚の医師に協力を依頼するも…結果に慄く医師。フーフ『歌手』なんだか流し読みになってしまった。稀にみる美声の死刑囚を救ってみたものの…。激しくドラマティックな一冊でした。2022/08/04
藤月はな（灯れ松明の火）
47
リラダンのみ既読。しかし、どの作品も人間の情けが嘲笑われながら唾を吐きかけられて汚物として捨てられるような話ばかりで気が重くなります・・・。「拾い子」の可哀想だからと情を掛けたばかりに養子に妻を死に追いやられた夫の「死刑になって勝手に死んだ養子を地獄まで追いかける」と宣言するほどまでの言葉がそこまで追い込まれた悲痛さを増しています。「歌手」も何とも皮肉。裁判員制度が導入された今でも犯人が本心から悔いているということを判断することは難しく、「罰は犯した罪と同等に与えられる」ということは必ずしも機能しない。2014/03/14
あじ
40
死に直面した自我を劇(はげ)しく描いた三篇。この首が最期に役立つならば…リラダン「断頭台の秘密」が抜きん出ていた。2018/04/13
神太郎
29
劇？なのかな～というのが第一印象。死刑やら裁判やらが絡むためどうも今回の一字は外れてる気がする。『拾い子』は救いがない。バットエンドではないがスカッとしない。『断頭台の秘密』は『未来のイヴ』を書いたリラダンの作品。訳がやや古めかしいが会話劇が非常に巧みだ。ラストはゾッとするが、本巻では一番好きな内容だ。『歌手』正直ぴんとこない。まぁ、面白いが内容があまり頭に入ってこなかった。今回の収穫は手に入れてるがまだ、未読の『未来のイヴ』の著者リラダンを読めたこと。雰囲気はつかめたので読めそうな気がしてきた。2020/02/22
鯖
16
劇はなんだろ、惨劇とか登場人物が劇物扱いとかそういうやつか。クライスト「拾い子」伝染病が蔓延する村で孤児を助けたばかりに、その孤児から移った病で実子が亡くなり、…しかもその孤児に全てを奪われという話。リラダン「断頭台の秘密」死刑囚にギロチン後のどこまで意識があるかの実験をしたいともちかける高名な外科医。まばたき３回。フーフ「歌手」あまりの美声により死刑を免れたロンコが枢機卿たちを逆に失脚させてく話。2021/09/05
