百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 169p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121504
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

村の落ちこばれ少年・斉藤平太は、父の威信で職に就いたものの、間抜けな失敗ばかり。皆の嘲笑に嫌気がさして心機一転上京するが…(宮沢賢治『革トランク』)。級友の作り話遊びに退屈した「私」は、「今迄隠して居ましたけれど」と自らの秘密を語りはじめた(与謝野晶子『嘘』)。「わたしたちは色が白いから、いちばん文明が進んでいるのですか?」―盲目の少年の問いに、大人たちは狼狽する(エロシェンコ『ある孤独な魂』)。曇りなき心で綴られた名篇が、鏡となって虚構を映し出す。

著者等紹介

宮沢賢治[ミヤザワケンジ]
1896‐1933。岩手県花巻市に生まれる。盛岡農林高校在学中から詩や散文を書き、教諭を経て農業を主とした生活に入る。最愛の妹の死を『永訣の朝』に、病に倒れて『雨ニモマケズ』を著した

与謝野晶子[ヨサノアキコ]
1878‐1942。大阪府堺市生まれ。与謝野鉄幹との出会いから「明星」に短歌を発表するようになり、初の歌集『みだれ髪』で一躍注目を集める。反戦詩『君死に給ふことなかれ』を発表するなど、社会問題に対して文壇から一石を投じた

エロシェンコ[エロシェンコ][Eroshenko,Vasilii]
1890‐1952。ロシアの詩人・童話作家。4歳で失明し、モスクワやロンドンの盲学校で学び、『提灯の話』でデビュー。1914年からは東京に在住し、『夜明け前の歌』『人類のために』などを執筆した。後に中国に渡り、魯迅や周作人と親交を持った。エスペラント(国際語)普及にも尽力した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アルピニア

50
「革トランク、ガドルフの百合/宮沢 賢治」革のトランクは嘘の象徴。「嘘、狐の子供/与謝野 晶子」嘘をついているうちに自分自身がその世界に浸ってしまう。「ある孤独な魂、せまい檻、沼のほとり、魚の悲しみ/エロシェンコ 高杉一郎 訳」衝撃を受けた。澄んだ視点から描かれる淡々とした文章が心を抉る。どの物語にも深い哀しみがにじみ出ている。エロシェンコさんは、人類の平等にとどまらず、全生物の平等に思いを馳せていたのではないか。エロシェンコ作品をもう少し追いかけてみようと思う。2022/12/26

モモ

50
宮沢賢治『革トランク』はヘンテコな設計をする平太の嘘の出世話。それを一目で見破る父が可笑しい。与謝野晶子『狐の子供』は昔も今も変わらぬ意地悪な女の子。最後の返しが良かった。4歳で失明したエロシェンコ。盲学校の生徒が質問する内容に先生たちは答えられず、逆に怒り出す。彼らは目が見えないぶん、自らが実際に感じたことを信じる。そして、それはきっと正しい。日本を追放される前日に「芸術家の悲しみとして」書いた『魚の悲しみ』はエロシェンコの不当に支配する者への怒りに満ちている。エロシェンコの作品をもう少し読んでみたい。2020/08/09

あじ

42
8つの『嘘』を収録した短編集。エロシェンコの4篇に脳天が痺れました。鋭利な闇の目(エロシェンコは盲人)で、胸裏をまさぐられる羞恥と歓喜を交互にかき抱いたのでした。◆2019年7月 追記メモ 百年文庫「花」に収録されている城夏子『つらつら椿』にエロシェンコが登場。城さんのお父様(緑内障で失明)とエロシェンコが 対面する場面が描かれている。2018/04/23

神太郎

36
今回は短編が一人一作品ではなく、複数作だったので大変満足だ。宮沢賢治『革トランク』はなんと言うか、見栄ばかりが見えて、そりゃ親父さんも苦笑いになるよね。与謝野晶子『嘘』はいきなり継子だのを九つの子がある程度意味わかって話してて驚く。今以上にませてたのか?でも、ここでそんな嘘をついてどうするのかなと思ったり。エロシェンコ『ある孤独な魂』は盲人だからこその視点が新鮮であり、痛快で何回か笑ってしまだた。と同時に盲人の方への当時のロシア内での理解がかなり低かったのが伺えて興味深かった。2020/01/22

マッキー

23
ふつうは3人の作者の短編がそれぞれ一つずつ収められているけどこの本は合わせて計八編が収録されていた。盛りだくさん。エロシェンコ「ある孤独な魂」は盲目の作者が独特の感性を活かして人間の本質に迫る作品。目が見えない主人公たちは話し声や相手の手の感触、気配で物事のすべてを感じ取っていく。差別的な先生に言い返すそのセリフにはっとさせられる場面も多かった。2017/03/16

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