百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 145p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121498
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

「町っ子と遊んではいけません」―気の弱いお屋敷の子が、秘かに心を震わせた恋の結末は(水上瀧太郎『山の手の子』)。意のままにならない恋をパリに残し、イタリア旅行に出かけた私。水の娘・オクタヴィに語る、宿命と幻影に彩られた情熱の物語(ネルヴァル『オクタヴィ』)。「よその伯父さんが連れに来たんだ。」―別れのことばもないまま、不意に姿を消してしまったお藤さん。瀬戸内の情景と淡い恋心が眩しい、鈴木三重吉の文壇デビュー作(『千鳥』)。過ぎし日の、はかなくも美しき追想の世界。

著者等紹介

水上瀧太郎[ミナカミタキタロウ]
1887‐1940。東京・麻布生まれ。本名は阿部章蔵。慶應義塾大学在学中に執筆した『山の手の子』が永井荷風に認められる。ハーバード大学に留学し、帰国後は明治生命に勤務しながら執筆活動を行った

ネルヴァル[ネルヴァル][Nerval,G´erard de]
1808‐1855。フランスのロマン派の詩人、作家。パリ生まれ。ゴーチエ、ユゴー、デュマらと親交をもち、夢と幻想を描いた作風は、後のシュールレアリズムにも影響を与えた

鈴木三重吉[スズキミエキチ]
1882‐1936。広島市生まれ。初めて書いた小説『千鳥』が夏目漱石に激賞されて作家デビュー。その後、童話雑誌「赤い鳥」を創刊して、児童文学の発展に大きな功績を残した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

104
いずれも美しくてはかない短編が収録されている。水上瀧太郎の『山の手の子』は主人公が年上の女の子に恋心を抱く。山の手の子供から見た下町の世界の描写が新鮮だ。彼の初恋は実らない。このような失恋の悲しみは、大人になる時に誰もが経験するものだと思う。『千鳥』は現実と幻想のあわいを描く美しい作品。主人公が出会って淡い憧れを持った女性が急にどこかへ行ってしまう。夕日に照らされた瀬戸内の海の描写が一幅の絵のようだ。彼女が残した袖に描かれた千鳥が、読者をこの世の外へ連れて行ってくれる。2018/06/03

モモ

49
水上瀧太郎『山の手の子』山の手の高台に住む「お屋敷の子」。だらだら坂の下の町っ子と遊ぶようになり、世界が広がる。なんとなく明治生命創業者の父を持つ作者自身のように感じる。ネルヴァル『オクタヴィ』ある恋から逃れるためイタリアを旅する私。イギリスの水の娘オクタヴィに語る話。死が近くに感じられる。コレラ流行のため四十日間の検疫隔離期間を避けて陸路を選んだとあって、1808年生まれのネルヴァルの頃にも隔離期間があったのが驚き。鈴木三重吉『千鳥』突然いなくなった藤さんの事情を聞かないようにする青木がもどかしい。2022/12/13

神太郎

36
最初、梯(はしご)と読んでたので、コンセプトと合わなすぎと思ったがよく見たら部首違うという(笑)。おもかげというのであればなるほど納得の行くチョイスである。おもかげというのだから懐かしい記憶なり、淡い恋心が絡んだりとそこらはやはり日本の作家水上瀧太郎、鈴木三重吉の短編はとても心にささるものがある。ネルヴァルは分からなくはないのだが、作風がシュルレアリスムよりだったのでややわかりづらさがある。だが、どれも過ぎし日の思い出に浸り、懐かしんだり、少しほろ苦かったり、あまり触れたくなかったり。触れ方も人各々。2020/01/21

アルピニア

34
「山の手の子/水上 瀧太郎」坂の上のお屋敷に住む「坊ちゃん」は、家を抜け出して下町に遊びに行く。そこで出会う人々。その中でも、彼の心に深く刻みつけられたお鶴ちゃんとの別れ。「オクタヴィ/ネルヴァル(稲生 永 訳)」もともとの作風なのか、訳の問題なのか、話の筋が追えなくてモヤモヤした読後感。「千鳥/鈴木 三重吉」逗留先で出会ったお藤さん。気になりながらも踏み込めずにいるうちに突然去ってしまう。2022/09/25

臨床心理士 いるかくん

22
3篇から成るアンソロジー。ちなみに「俤」の読み方は「おもかげ」。弟とは関係ないので注意。どの作品もテーマに沿ったバラエティに富んだ作品集。2014/02/17

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