百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 164p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121474
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

銀座の繁華街で出会った大男は、「人間は食べないよ」と言ってにやりと笑った。異界の者との滋味豊かな交流を描いた、吉田健一の『海坊主』。精神を病んだ私は知人の紹介で、風変わりな道場「天狗洞」の食客となった。珍妙な修行に耐える私の、夢と狂気に満ちた混沌世界(牧野信一『天狗洞食客記』)。妻・トキ子の家造りを傍観していた僕だが、馬小屋が建てられたところから状況が一変した。居場所を失い、翻弄される男の行き着く先は(小島信夫『馬』)。非日常から日常を照らし出した、奇想天外な三篇。

著者等紹介

吉田健一[ヨシダケンイチ]
1912‐1977。東京・千駄ヶ谷生まれ。父・吉田茂に伴い幼少期に海外で教育を受け、ケンブリッジ大学に入学。英文学者、批評家、翻訳家として活躍する一方、随筆集『乞食王子』『甘酸っぱい味』や評論『英国の文学』『ヨオロッパの世紀末』小説『金沢』などを発表した

牧野信一[マキノシンイチ]
1896‐1936。神奈川・小田原生まれ。早稲田大学を卒業後、小説『爪』が島崎藤村に評価され文壇デビュー。私小説や、『ゼーロン』などの幻想的な作品で作家の地位を確立したが、神経衰弱により自死

小島信夫[コジマノブオ]
1915‐2006。岐阜市生まれ。1954年発表の『アメリカン・スクール』で芥川賞受賞。明治大学で教鞭をとりながら、『小銃』『抱擁家族』『私の作家評伝』『別れる理由』などを発表し、90歳をすぎても旺盛な創作意欲を示した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

123
人を喰ったユーモア満載の3篇。牧野信一の「天狗洞」は、精神を病んだ主人公が奇想天外な道場で修業する話。透明なナンセンスが愉快で、坂口安吾の「風博士」に通じるところがある。小島信夫の「馬」は、馬に肩入れする妻に翻弄される主人公を描いてゆく。あちら側に行ってしまわないで、現実の世界にかろうじて踏みとどまっていく感じが好みだった。吉田健一の「海坊主」がお気に入り。雨の日に見知らぬ男と銀座で酒を飲む話がエスカレートしていく。しっとりとした雰囲気がたまらなく良い。奇想天外な結末にはおおらかなユーモアが漂っていた。2016/07/03

モモ

48
吉田健一『海坊主』銀座の料理屋で飲んでいて、出会った一人の男。良い飲みっぷりで、会話も洗練された男。ビフテキをたいらげ「人間は食べないよ」と言う。そして、その男の正体に驚く。牧野信一『天狗洞食客記』狂気も感じる、訳が分からなかった。精神を病んだ男が道場に入るも、そこでの毎日が訳が分からない。読むのが苦痛。小島信夫『馬』妻が勝手に家を増築する。そこが夫の部屋だと言うが、階下に馬小屋があり、実際に馬が住む。その馬を夫よりかいがいしく世話する妻。なんともな結末。「客」として読めるのがよい、奇想天外な一冊でした。2023/01/02

神太郎

41
今回もまた随分と不思議なお話が沢山である。『海坊主』これは怪異と出会ってしまった話。導入があまりに自然なため非日常感が際立つ。『天狗堂食客記』、こちらは実にコミカルな話である。コミカルがゆえに現実離れしている。その感じがまた面白い。師匠がいい味を出している。『馬』。これは純粋な狂気を描いている気がする。ただ、最後の女性の言葉で主人公も救われたのでは?と思いたいのだが……。客というタイトルからは想像もできぬ内容の三篇。久々に頭がぐわんぐわんした。2020/01/09

臨床心理士 いるかくん

32
3篇から成るアンソロジー。3篇とも、いずれ劣らぬ傑作揃い。異様なリアリティがありながらも、あふれんばかりの幻想的な雰囲気に満ちた3作品。読む前に自分がいた世界と読んだ後の世界がまるで一変したかのような魔力に溢れた凄まじい短編集。2014/02/20

kinkin

23
吉田健一「海坊主」が一番気に入った。美味しそうなお酒の匂いが漂っている。2014/03/03

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